はじめに

史上空前の低金利を追い風に、個人による不動産投資が注目を集めています。購入した物件を賃貸し、家賃収入を得る不動産投資は、将来の年金を補完する収入源としても期待される一方、高値掴みや家賃の値下がり、空室といった不動産ならではのリスクも。

リノベーション賃貸物件の運営やマンション投資のサポートで個人投資家の信頼を集めるリズム株式会社の専務取締役・織田基久氏、顧問・巻口成憲氏に、不動産投資の現状から不動産投資のリスク、同社の商品戦略などについて話を訊いてみました。

不動産価格のボラティリティは株の9分の1

――不動産は株式よりハードルが高そうですが?

巻口: あまり知られていませんが、不動産価格は株価よりもずっと値動きが少なく、安定しています。価格変動の度合いを示す「ボラティリティ」は、株が18%なのに対し、不動産はわずか2%。しかも両者の値動きには相関性はないので合わせて保有するには理想的な組み合わせです。

08年のリーマンショックでは、日本の株価は半値近い水準まで暴落しましたが、不動産価格はほとんど下がっていません。取引量は減りましたが、大家さんには関係ないですよね。金融危機で株価が半分になることはあり得ますが、家賃が半分になったという話は聞いたことがないでしょう?

ただし、株式市場に上場しているJ-REIT(不動産投資信託)は、株との連動性が高いので注意が必要です。不動産の代わりに保有しているという投資家は多いのですが、株との分散効果はそれほど期待できません。

巻口 成憲 Shigenori Makiguchi
リズム株式会社 顧問/リーウェイズ株式会社 代表取締役。国内不動産会社、現プライスウォーターハウスクーパース、現デロイトトーマツコンサルティングを経て、2005年にリノべーション不動産投資のリズム株式会社設立に参画。2014年テクノロジーによる不動産取引を実現するリーウェイズ株式会社を設立し代表取締役に就任。

――そうはいっても高額投資になるので怖さはありますね。空室が続いたり、想定していた家賃では埋まらず値下げしたりして、収益が悪化するというリスクもあります。

巻口: 不動産が株よりも難しいと感じるのは、理由があります。一般的に不動産の収益力を測るには、家賃収入を物件価格で割って求める表面利回りが使われます。この計算に使う家賃には相場があるうえ、古くなるほど下がるので、本来はそこまで試算するべきですが、実際は不動産業者の「勘」と「経験」に頼っているのが実情です。根拠がないうえ、その業者の良し悪しもわかりませんから、そりゃあ怖いですよね。

私たちは安心して投資ができるよう、ビッグデータに基づく客観的で詳細な投資評価を行っています。具体的には、4200万件もの物件情報を分析し、「経年減価」「駅乗車人員数」「緑化状況」「商圏力」「アクセス」などの情報をデータとして蓄積し、投資シミュレーションや損益分岐点の算出を行っています。

「勘」と「経験」に依存してきた不動産投資に客観的な指標を

――ビッグデータでは何がわかるのでしょうか。

巻口: 物件が古くなるほど家賃は下がり、23区だと平均して1年で1.44%下落します。一方、原宿は2.5%、勝どきは0.92%です。下落率だけを比較すると、原宿は家賃下落が激しく、勝どきは安定していますね。

一方で家賃のばらつきの観点で比較すると、23区平均なら同じワンルーム物件で例えば7万円から10万円の家賃が相場であった場合、勝どきは7万円から8.5万円までの範囲で収まってしまう。一方で、原宿は7万円から14万円まで幅広く設定できまる地域であるということです。

このデータから何がわかるかというと、勝どきはオーソドックスな物件を買って、ゆるやかな家賃下落を受け入れながら運用するのに向くエリアです。一方ばらつきが広い原宿は、古い物件や条件の悪い物件でも借り手はつきやすいうえ、改装して付加価値をつければ相場を大きく上回る家賃で貸し出すことも可能になります。こうした詳細なデータを分析し、最適な投資を提案できるのは国内の業者でも弊社だけです。

――どんな投資が成功しやすいかは、家賃相場だけではわからないのですね。

巻口: 株なら投資判断をするための指標がたくさんあるのに、不動産投資は表面利回りぐらいしかないのでは、二の足を踏む人がいて当然です。弊社では家賃の設定も、詳細なデータにもとづいて提案しています。

たとえば、東京23区なら極端に家賃を下げれば必ず借り手はつきますが、下げ過ぎると収益機会を逃してしまいます。借りる人が現れるギリギリのラインを算出することも、ビッグデータなら可能です。

織田: 投資家の皆さんが一番心配するのは家賃の下落や空室ですが、私たちは保有している期間のトータルの収益を考えます。ばらつきの大きなエリアなら、築30年ほどの古い物件を安く買い、追加費用をかけて「リノベーション」を加えて新たな魅力をプラスするのはとても有効な戦略です。

リノベーションは、古くなった内装を新しいものに取り変えるだけのリフォームとは異なり、物件の性能を向上させたり、大胆なデザイン変更で新しい価値をもたらしたりという改装です。弊社では感度の高い人たちにターゲットを絞った個性ある部屋のデザインを30ものシリーズで展開しており、家賃を相場より2割程度アップさせることに成功しています。

REISMが展開するデザインシリーズの一つ。koko Series: iCafe

――具体的にどういったリノベーションを行うのでしょうか。

巻口: 新築物件はピカピカで都会的な雰囲気ではありますが、誰かが住み始めたその日から中古になって価値は下落していきます。一方、弊社が手がけるリノベーション物件はこれとは真逆で、「クラシカル」がコンセプト。古さがもたらす味わいと魅力を前面に押し出しているので、年数を経ても価値は下がらず、むしろ上がっていくんです。

織田: 感度の高い人たちは本物かどうかを一目で見抜くので、デザインだけでなく素材にもこだわっています。たとえば、フローリングも合板ではなく無垢材を使い、温かみと安らぎを感じられるようにしています。一方、キッチンやバス・トイレにはシンプルな設備に抑え、費用のバランスを取っています。エリアによって好まれるデザインも違うので、費用対効果の高いリノベーションのノウハウも、データとして蓄積しています。

巻口: リノベーションには、融資条件の緩和というメリットもあります。通常、築年数が古い物件は、長期のローンが組めないことが多いのですが、リノベーションをして価値を高めることで返済期間を延長してもらえるケースが多くあります。特に弊社のこれまでの実績を評価する金融機関は多く、優遇を受けられています。