はじめに

投資とは「投じて相手に資すること」

もう1つ基本的な話なのですが、投資というのは「投じて相手に資すること」です。

相手に資していないのであれば、それは投機です。相手に資するということは、自分が相手のためにお金を出すという行為です。先ほどから申し上げているとおり、相手のことを理解しないで投資はやらない、できないはずなのです。それは投資になっていません。ただもうけたいと思っているだけで、それは投機です。

投資をするときは、相手に資しているかどうかを考えていただきたいと思います。投資というのは、自分への投資、お子さんへの投資、お孫さんへの投資、明日返ってくると思いますか。週末返ってくると思いますか。月末返ってくると思いますか。年末返ってくると思いますか。そんなふうに思っていないですよね。思っていないのにもかかわらず、いきなりお金の投資になった瞬間「あれ、いくらになっているだろう」と考えてばかりなのです。おかしいと思いませんか。投資なのだから時間がかかるのです。時間がかかるということを理解していなければ、それは投機です。そういうものです。なので、時間をかけて投資を行ってください。

「リターンの予測可能性」と「リスクの予測可能性」

これも知っておいてほしいことで、少し難しい話ですが「リターンの予測可能性」と「リスクの予測可能性」というものがあります。プロから確実に言えることは、リスクの予測可能性の方が高いです。リターンの予測可能性は低いです。先ほども言いましたが、株価を予測して当たるわけがないと言っているのと一緒で、当たらないのです。それに対してリスクは、予測可能性が高いのです。ここがポイントです。

ご自身がポートフォリオを組んでやるうえで、リスクをしっかり管理していく。金額や率をしっかり管理していくことが大切です。なぜならば、そっちの方が確実だからです。人というのは、大体リターンばかり見ます。今一番調子がいいものを探そうとします。これはダメです。さっきも言いましたが、それでは床屋のおじさんと一緒です。そうではなくて、本当にやらなくてはいけないことは、その人たちがやっている行為が信じられるかどうかです。そっちの方が大事だということです。それがあって、自分が許容できるリスクの範囲内かを見て決めるほうが大事です。リターンから決めてはダメということです。リターンは絵に描いた餅です。いろんなベンチャーを見てきましたが、事業計画どおりにいった会社なんて1つもありません。いくわけがないですよね、神様じゃないんだから。だから、ご自身のアプローチの仕方をちゃんと考え直して、見つめ直してください。

これからの社会に必要とされる会社がどういう会社かというと単純で、社会性と経済性を両立できる会社であることは間違いありません。鎌倉投信を作ったとき「そんなきれいごとが成り立つわけがない」と業界の中で言われました。でも今は、ESGが普通ですから。10年でそこまで変わるのです。皆さんにおいては、これからもっと変わります。次の10年は、事業性や経済性より、もっと社会性に寄ってきます。それがなぜなのか、分かりますか。ESGがスタートしたということもありますが、それだけではなく世界的な流れになってきているからです。そちらの方向にシフトさせようとする流れができてきているからということです。

国連では「SDGs」というのをやっていて、企業はその対応を迫られています。アメリカでは、ダイベストメントが言われています。ダイベストメントというのは、環境に良くない会社、SDGs上、良くない会社と言われているところからお金を引いてくださいという活動が活発になってきています。具体的にいうと、たばこ産業であるとか、化石燃料であるとか、そういったところからお金を引いてくださいという活動団体が活発に動いていて、金融機関がそれにどういう対応をしたかという報告がネット上にあがる時代になってきました。そうした時代の中、企業の社会性というのは、環境問題も含めてどんどん要請されていくことは避けて通れないのです。どんなにトランプ大統領が言ったとしても、残念ながらその流れを止めることはできないでしょう。

そうした場合、企業の社会性をどう見ればいいか。気をつけていただきたいのは、経営はバランスが大事だということです。社会性がある会社であったとしても、バランスが悪い会社は存続できません。やはり事業性がしっかりしていないといけないので、これも大切なことなのですが、企業を見るときは事業性という観点で「この会社のビジネスモデルは大丈夫なのか」ということと、社会性という観点で「期待される分野がこの会社にあるのか」ということをきちんと見る必要があります。そのバランスが悪い会社の成長性は期待できないということになります。その両面をしっかり見ていただきたいと思います。

「社会性のある会社」とは

本業で社会貢献する会社

では、社会性とは一体何なのか。われわれはいつも「本業で社会貢献する会社さんを選んでください」と言っています。よく大企業は、とってつけたようなCSR活動をしていて、利益が出ている間はやるのですが、利益が出なくなるとやりません。そういったところは皆さんも五感で感じていると思います。「こいつら、本気じゃないな」というように見ていると思います。ですから、本業できちんと社会貢献をしていく会社というのが必要とされていることは間違いないと思います。

製品のメンテナンスにポリシーがある会社

環境問題でもう1つ言うと、製品のメンテナンスにポリシーがある会社はすごく重要になってきます。長く使っていただくということにコミットしている会社でなければ存続できないということになっています。今、リサイクルとかさまざまなことが言われています。ペットボトルはプラごみですが、そのプラごみを中国はもう受け入れません。だから日本中に今、プラごみが余っていて大変な状態です。つまり、ごみの押し付け合いがもうできないのです。それが企業に責任が転嫁されていくことになっていくので、環境対策をきちんとやっていない会社は大変です。表には出ていないこともたくさんあって、例えば廃プラスチックという問題があります。韓国で逮捕者が出ています。その廃プラスチックはどこから来ていると思いますか。日本からです。そういうことが実際にグローバルベースでは行われています。製造業であっても、それをリサイクルするなり、リユースするなり、その部分に対する強みがない会社は危険なので注意してください。特に製造業です。これからの時代は、そういう時代になっていくことを理解していただきたいと思います。

社会課題を解決しようとする会社

当然ながら、社会課題を解決しようとする会社も増えていきます。その会社自身がどう期待されているのかということにフォーカスをしていただければありがたいと思います。ポイントとしては、上場企業を判断するとき、社会課題を解決しようとする会社が上場してきますが、そうした場合、大体が事業分野の中にITというのが入っています。そうしなければ上場できないからです。つまり、にわかITみたいなものもいるかもしれないということです。そういうところは注意してください。そういうものをつけないと上がれないという上場の問題があって、成長性が担保されないからです。普通に社会課題を解決しているだけでは無理なので、IT的なものをくっつけて上場するというのはよくあるパターンです。それがいいか悪いか、結果が出るか出ないかというより、付属品のようなITがあったら、怪しいと思った方がいいと思います。そういう目線で会社の社会性をしっかり見ていただくことがとても大切なことです。皆さまにおかれましては、まずご自身の中で本当に自分の投資に値するいい会社かどうかを見ていただきたいです。

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