はじめに

貯蓄代わりの終身保険をiDeCoに振り替え

ここまでで現役時代の家計が劇的に改善できましたが、まだ老後に大きな赤字が出ている状態は変わっていません。そこでさらに、当社の本業でもある保険に切り込んでいくことにします。

家計の見直しをする場合、保険の減額は一番に検討されるものです。保険は万一の保障という目的だけでなく、貯蓄代わりとしても活用する方も多いのですが、低金利の時代に保険を貯蓄の代わりに使うのは、どちらかといえばナンセンスという状態になってきています。

しかし、不測の事態に備える保障額は守る必要があります。そこで、医療保険は変えずに、貯蓄代わりに積み立てていた夫の終身保険を、1500万から500万に下げて、月3万円だった毎月の保険料を1万円に減額します。そうすると万一の際に遺族が受け取る額が減ってしまうので、掛け捨ての収入保障保険の方を毎月の受取額を20万円から25万円に増額します。そうすると、月4万円だった夫の保険料総額が2万2千円になり、1万8千円浮きました。

妻の方も医療保険は変えずに、貯蓄代わりの終身保険を1000万から300万に減額して、毎月の保険料も1万円から6千円に減らします。これだけだと万一の際の保障額が減ってしまうので、遺族が月10万円を受け取る収入保障保険を月額1,500円の保険料で加入し、妻の保険料総額は1万2千円減額できました。

要するに、保険を利用した貯蓄はやめて、万一ための保障だけに絞ったわけです。そうすると70歳でショートしていた収支が、80歳まで黒字を維持できるようになりました。保険の見直すことで、ようやく老後の家計まで改善する効果が現れました。

収入と支出はそのままでも、家計は健全化できる

とはいえ、今後は人生100年時代に突入するとも言われているので、黒字が80歳まででは少し心もとないかもしれません。残る20年のマイナスも、なんとか埋めていきたいですよね。そこで、いよいよここでiDeCoを投入しましょう。

ただ、現役時代の支出は増やしません。保険を減額したことで浮いたお金を、そのままiDeCoの掛金に振り替えます。具体的には夫が月額1万8千円、妻が1万2千円をiDeCoに拠出し、無理に上限まで加入することはしません。そのため、現役時代の収入と支出のバランスはまったく変わっていない状態です。

iDeCoは3%で運用すると想定します。これまでは足し算と引き算だけだった家計の収支に、掛け算が入ってくることになります。iDeCoの受け取りは年金で、夫は122万円、妻は94万円を10年間受け取ります。

これで将来の家計簿がどうなるかというと、80歳で資金ショートしていたのが、90歳に延びました。iDeCoは有利な制度ではありますが、だからといってやみくもに上限までかけると現役時代の資金繰りが悪化してしまうことがあります。ライフプランを見直す前に加入していたら現役時代も老後も家計が破綻していましたが、このケースでは支出は何も変えていない状態で、家計を劇的に改善できたのです。

これで90歳までは黒字の家計簿を維持できるわけですが、100歳まで生きる可能性もあります。もう少し黒字期間を延ばしたいですね。

iDeCoのデメリットとしては、途中換金ができないことと、掛金の拠出は60歳までで、運用は70歳までに制限されている点があります。そこで、もう少し長く運用できる金融商品も利用してみましょう。当初の設定ではすべて預金に入れていた余剰資金のうち月1万円は、投資信託など長く預けられていつでも換金できる金融商品を活用し、1%で運用するというシナリオに変更してみます。

そうすると、90歳でショートしていたのが5歳くらい延びました。当初の設定では2200万円に達していた老後の赤字が、これなら95歳の段階で300万円です。

繰り返しになりますが、当初の設定から支出と収入のバランスは一切変えていません。住宅ローンの返済年数と頭金の額を変えて、終身保険をiDeCoに振り替えて、積立預金を別の金融商品に変えただけで1900万円も家計を改善できたことになります。こうしたことが事前に見通せれば、今の生活を変えることなく最適なライフプランを設計して、生涯の家計簿を改善できるというわけです。

お金を大きく増やそうとすればそれなりのリスクをとる必要があります。でも実際はそんなに儲けなくてもいいので、健全な家計を維持したいですよね。利息のつかない預金だけでなく、掛け算や複利が活用できる金融商品を利用し、積立によって投資対象や時間を分散し、税金と手数料をなるべく小さくすることでそれも可能になります。iDeCoだったらこれらが全部実現できるのですが、ソニー生命ではもう一歩踏みこんで、iDeCoを含めたライフプランニングから家計全体を最適化するお手伝いをしています。

iDeCoはとても有利な制度ですし、周りの人も「たくさんかけた方が有利だよ」と言うかもしれませんが、すべての人にとって上限までかけるのが有利とは限りません。iDeCoを検討する前に、まずは現状を分析したうえで、最適な掛金を検討していきましょう。掛金の額を柔軟に変更できるiDeCoのメリットを生かし、育休などで収入が減る時期には掛金を減らしたり、一時的に掛けるのをお休みして運用指図者になる期間もあってよいのです。

いわゆる「住宅ローン控除」を受けている場合は、iDeCoの所得控除がすべて受けられないことがあるので、こうしたケースでも掛金の調整が必要になります。また、お子さんが16歳から22歳の時期には特定扶養控除という税制メリットが受けられるので、その時期にも掛金を減らしたり中止したりしてもいいわけです。やみくもに上限までかけるより、ライフプランに沿った最適な掛金を調整することが大切です。

また、iDeCoでは出口戦略も非常に重要です。老後の受け取り時には退職所得控除と公的年金等控除という税制優遇を受けられますが、これには一定の制限があるのであまり大きな金額を掛け過ぎてしまうと、受取時に課税されることがあるからです。

退職所得控除を使って一括で受け取るか、あるいは公的年金等控除を活用して60歳から70歳まで年金で受け取るパターンもあります。年金で受け取る場合は、その期間の公的年金の受け取りを保留し、受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」にすれば国民年金なら78万円から110万程度まで受給額を増やせる計算になります。

将来にわたって家計を安定させるには、公的年金や税制などもしっかり把握した上でライフプランを作成し、出口戦略を練っていくことも非常に重要になってきます。こうしたそれぞれのご家庭に最適な「iDeCo計画書」を私たちと一緒につくってみませんか。ライフプランづくりを通して最適なiDeCoの掛け方を発見し、みなさんの生涯の幸せをお手伝いしてくのが当社の願いです。

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