はじめに

2019年11月17日、お金に関連したあらゆることが学べる、年に1度のイベント「お金のEXPO2019」が開催されました。今後のマーケット見通しや、資産形成のノウハウ、不動産投資をテーマにした講演など盛りだくさんの内容となりました。

その中から、東京日商エステム 中山 裕嗣氏による「データで紐解く三大都市圏の不動産投資戦略」の講演内容をお届けします。

住民登録の少ない千代田区

東京都の中での人口の動きもチェックしています。賃貸の空室率や、家賃の下落率等を語る際には、必ず人口に目を向けます。私たちのような販売業者が家賃を決めているわけではないです。

賃貸管理の会社では、家賃保証をしてくれる会社も多いですが、空室リスクをその会社がかぶっているだけなので、実質的な入居率の安定性は解決されていません。

不人気路線、不人気駅の郊外物件の場合、そのリスクをオーナーがかぶるか、家賃保証会社がかぶるかです。空室の無理負担を家賃保証会社にかぶらせたところで、結局家賃の減額交渉をされたり、拒めば家賃保証を解除されたり、そして家賃保証会社自体が倒産してしまう例も意外とたくさんありますので注意が必要です。そもそも空室リスクや家賃の下落リスクを回避するには、やはり人口が集約された場所を、選んでもらうべきだと思っています。

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東京都は人口が増加し続けています。昨年と比べても9万人増えていますが、その中で減少している地域もあります。微々たる増加のエリア、徐々に増加しているエリア、そして大きく増加傾向にあるエリアへと分かれます。

人口増加が目立つエリアは山手線沿線に見受けられます。千代田区はこのような緑色になっていますが、東京23区中住民登録が一番少ないエリアです。ご存じの通り、皇居に隣接した丸の内や大手町というビジネスエリアです。

実際に千代田区にある、大手町や丸の内の昼間人口は、たった1キロ平方メートルの中に7万人もの人が集まりお仕事をされていらっしゃいます。

大手町に通じる東京メトロ東西線は都内一の満員電車で、乗車率200%にもなり人と人の間に隙間すらありません。通勤時間が片道1時間半~2時間の人も珍しくなく、毎日たくさんの人が集まり、そして就業後たくさんの人が自宅に帰っていきます。

実際、千代田区に住民登録をして住んでいる人の数と比べたら、17倍もの差がありました。

他のエリアの人口密度を調べると、日本全土の平均は1キロ平方メートルあたり335人。日本は山間部が多いため、人が住める場所は限られていますが、平均するとこのような密度になっています。

住居を取り合う豊島区

都道府県で一番人口の多い、東京都に関しては、1キロ平方メートルあたり6,000人です。そして、東京都23区の中で、一番密度の濃いエリアは、1キロ平方メートルあたり2万2,000人の豊島区、山手線の池袋駅のエリアです。すごい密度で賃貸マンションを取り合っています。そうして家賃の相場が出来上がります。

東京に引っ越ししてきた一人暮らしの方であれば、仕事のモチベーションも高いですから、理想は通勤時間を短くして、仕事が終わったあとは、すぐ行きたいところに立ち寄ったり、人と会ったり、趣味の時間を増やしたり、自分らしい生活をしたい希望を持たれる方が多いと思います。

そうなると、職場も自宅も近い職住近接エリアで、生活の拠点になるお部屋選びの重要性が増し、やはり利便性が整ったエリアは人気が集中するので、お部屋が取り合いになって相場が上がっていきます。

東京都は9万人もの人口が増えていますが、その中で23区内で分譲されている新築供給戸数というのは、年間1万7,000戸しかありませんでした。「こんなにたくさんのマンションを建設してたらお部屋余るのでは」と心配される方もいらっしゃるのですが、全然足りないです。ゆえに奪い合いの競争原理の中で現状の価格になっています。

東京の人口が減少していくと仮定すれば、その理由は都内の人たちが地元に帰り、地元での進学や就職で充分な満足が得られ、豊かな社会福祉が待っていて、全国どこで生活をしても自分らしさの輝きを得られるような環境があること。

東京にわざわざ引っ越してこなくても済むような未来があれば、人口は減り、需要も下降し、都内の不動産の価格や家賃が安くなる可能性はあります。しかし、そうなることは考えにくいです。

超都心エリアの需要

この街自体を形成している軸はJR山手線です。東京駅から品川、そして渋谷、新宿、池袋。巨大なターミナル駅となって、そこからさらに私鉄や地下鉄が枝分かれしていきます。

そのような場所は必ず大型の商業施設が建ち並んでます。限られた土地面積の中で、人がどんどん集約されるにつれて、オフィスビルが建ち替わるたびに、ますます上へ上へと床面積を広げて、背の高いビルがたくさん建ってきています。

景気回復のおかげで就職率が回復して、東京で働かれる方の人口、住まわれる方の人口が増えてきて、経済の循環性がますます成り立っていっています。

実際、東京都内の家賃相場は、JR山手線沿線上の駅近のマンションにお住まいになられると、25㎡の1Kタイプのマンションでも軽く月々10万円を超えます。全国平均の年収以上を稼がれる、会社員の給与年収が500万~600万の方でも、10万の家賃は意外ときついと思います。

「じゃあ、なんでそんな高いところに住めるの?」というと、上場企業や、しっかり福利厚生がある企業にお勤めになられると、住宅手当が出るところが多いです。

弊社を例に挙げさせていただくと、出張の関係で朝早くや夜遅くに会社に出てくるスタッフも多いので、住宅手当の支給があります。

いい会社だと感じ、弊社に入社してくれた仕事に情熱あふれる新人が、住宅手当があれば、月々10万円の家賃のエリアに自己負担7万円で住めるようになります。

弊社のみならず手当てがある企業は珍しくもないと思います。企業名義で社宅としてお部屋を借り上げて、スタッフに住ませるという全額会社負担の企業も耳にします。いわゆる法人借りです。

その新人たちも、仕事にキャリアができ安定したお給料を稼ぎはじめ、出会いもあるようになると、いずれ結婚して家族が増えて、「広い部屋に住もう」となります。

どうしても同じ都心では部屋が広い分家賃が高いことや、一緒にお住まいになる奥さまやお子様の事も考えれば、月々負担していく経済面、生活や育児環境も考えないといけないため、郊外を視野に移り住むケースもあると思います。

お住まいになられている方の退去のタイミングは必ず来ますが、また次の世代が入居して来る、人が循環しているエリア。要は人を魅了し続ける、発展性のあるエリアに着目しておいていただければ、入居率は高く、時代相応の先導した家賃相場が維持され、安心だと思っています。

期待されるビッグプロジェクト

今話題なのが、“高輪ゲートウェイ駅”の誕生です。約40年ぶりに、山手線に新駅が誕生し、品川駅周辺がもっとにぎわいを見せ始めると思います。そして来年には、虎ノ門ヒルズのふもとに東京メトロ日比谷線の“虎ノ門ヒルズ駅”が誕生します。東京駅のそばでは、“常盤橋プロジェクト”という、今世紀最大といわれるビッグプロジェクトも予定されております。

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これから雇用がますます回復し、全国から就業人口が、東京に集約されていく方向性がうかがえます。地元を離れ東京に移り住まわれる方のご準備の中で、「住」の確保は最優先事項かつ、必然的です。私も14年前大阪から上京して、東京に親戚もいませんでしたので、住まいは買うか借りるかの選択肢しかありませんでした。

単身者の方は、当然ですが東京に移り住まわれる際に、お住まいをまず「借りる」方が圧倒的に多いです。そこにマンション経営の需要があります。借りる場合は、いろいろな条件があると思いますが、結局は「予算」が一番重要です。

払う家賃が高いか安いかの肌感覚の基準は、給与の30%が基準になっている方が多いように感じます。であれば、お給料たくさん稼いでいる人が多いだろうな、という場所で賃貸マンションを持っていただけると、今後も高い家賃を取り続けることができます。

弊社が分譲させていただいている物件の具体例をお伝えさせていただきますと、これは新築物件で、品川区にある東急目黒線の西小山駅2分の物件です。価格は2,890万円~、家賃は10万5,000円~という内容で分譲させていただいています。

6帖1Kのお部屋ですが、地方にお住まいのお客様が「東京の人は、こんな狭いお部屋が好きなのね」と言われますが、実際、狭いお部屋が好きなわけではありません。自分の支出できる予算に合った選択肢の中から借りるとなると、予算に合った広さのお部屋で、最大限の利便性を追求する、その利用価値の相場がこのような家賃になります。

お部屋の広さや設備仕様ももちろん重要ですが。家賃の価値は、その近隣周辺の利便性を借りる価値が家賃に反映されます。立地条件はマンション経営において非常に大事な要素になると思っています。