はじめに

なぜ投資信託が選ばれたのか

では株式投資ではなく、投資信託が選ばれた理由はどこにあるのでしょうか。筆者は分散投資の観点であると考えます。

投資信託協会によれば、投資信託とは「投資家から集めたお金を1つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品」とされています。つまり、投資信託は専門家に任せて投資ができ、かつ分散投資の最良の手段なのです。

分散投資を象徴する言葉に「卵は1つのカゴに盛るな」というものがあります。資産を1つに集中するのではなくてさまざまな商品に分散して保有しておいたほうがいいという、このポートフォリオの考え方は指導の軸になってくるでしょう。

これは資産運用だけではなく、たとえばやるべきことの優先順位に応じて、かける時間の配分をどうすればいいかといった、生活をしていくうえでの意思決定にも活用することができます。このように資産運用の視点を出発点とし、生きていくうえで必要な考え方も教育できれば、意義の大きい科目になるでしょう。

生徒のために現場に求められること

生徒への間接的な影響としては、資産運用をする仕事の存在を知ることはキャリアプランの幅を広げることにつながる面があるのではないでしょうか。

専門家がお金を集めて運用している投資信託について10代のうちから知識をつけることは、自分の資産形成の手段が広がるだけでなく、将来の進路を決める際の選択肢の1つとして金融関係の仕事が身近になってくる可能性が高くなるでしょう。

これは家庭科の導入当時、大きな役割を担ってきた「職業教育」の意義を再認識させるきっかけになるかもしれません。資産形成教育の導入を起点として、専門的な教育の導入が他の科目でも進むことが期待されます。 

初めて導入される資産形成の内容で最も危惧されるのは、資産運用は難しいものであると生徒に認識されてしまい、金融がより遠い存在になってしまうことです。また、これまで資産運用について教育を受けて来なかった教師が資産運用を教えるということも、正しい教育という観点で懸念の声も少なくありません。

これまでの価値観で一方的に指導するのではなく、専門家によるゲスト授業や、金融庁など公的機関のサポートといった総合的な施策をもって、教師も生徒も共に学んでいく姿勢が必要なのではないでしょうか。

<文:Finatextグループ アナリスト 菅原良介>

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