はじめに

変わらざるを得ない卸売業

BtoBの物販業、すなわち卸売業は、物流費や人件費などのコスト上昇への対応として、EC化を志向せざるを得ない環境にさらされています。

中小卸売事業者はコスト削減余地に限界があるため、販売価格を下げることができず、顧客へ価格メリットを提供できません。このため、中小の卸売事業者と取引する顧客は、ECサイトから購入することに価格面でのデメリットがなく、EC利用のハードルは低いといえます。

他方、大手卸売事業者でも、一部のよほど資金体力が豊富な事業者を除き、省力化・無人化などへの大規模投資が難しく、中小同様にコスト削減に限界があります。結果として、顧客への訪問頻度をさげる、あるいは対応エリアを絞る、といったデリバリーのサービスレベルを落とすことでコスト削減を図る事業者が出てきています。

従来のサービスを受けられない顧客は、ここでも発注やデリバリーにメリットのあるECサイトを利用するインセンティブが働きます。EC卸にとって、コストアップは、シェア拡大のチャンスでもあるのです。

コロナ禍で調達手段を見直し

BtoB取引における主要なマッチング機会となる展示会のほとんどは、コロナ禍で中止や延期を余儀なくされました。また、受発注に活用される電話やFAXは、従業員の在宅勤務の推進において障壁となりました。こういった商談機会の減少や業務フローの見直しを行わざるを得ない環境下で、多くの事業者はECの活用を検討するきっかけを得たといえます。

本来、買い手の事業者にとって、ECは時間や場所を問わず利用可能で、業務の効率化に資するというメリットを有する調達手段です。既存のマッチングや調達手段が機能不全に陥る中で、ECの活用が進み、前述のとおり卸売業の業界構造変化が続いていることも後押しし、業界におけるEC活用は不可逆なトレンドとして定着する可能性が高いとみられます。

EC化が遅れていたスモールBtoB ECの分野でも、売り手、買い手ともにECの利用動機が強まっている今、新たな業種への広がりを通じて、本格的な成長に入ったと考えられます。

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