はじめに

住宅ローンと老後資金

10年前に購入した住宅のローンが、あと25年残っています。ご相談者さんは「来年から100万円ずつ繰り上げ返済をしたい」といっていますが、このあたりを具体的に考えてみましょう。

繰り上げ返済をしないで通常通りに返済した場合、現在43歳のご主人が68歳になるまでローンの返済が続く予定です。少なくとも退職までは繰り上げ返済をしておきたいと考えると、65歳で定年退職とした場合、まずは3年分の繰り上げ返済を目指しましょう。3年間繰上げ返済するには、金利分を含めずに計算すると、11万2,000円×12カ月×3年=403万2,000円が必要です。

現在の貯蓄残高は100万円で、共働き家族の貯蓄残高としてはかなり少ない状況ですから、繰上げ返済のためにいまある貯蓄の取り崩しはできません。今後についても、月々の黒字分は、転職で収入ダウンすることを想定すると、将来の教育費積立でほとんど消えてしまいます。

となると、繰上げ返済に充てられるのは、ご主人のボーナスからということになります。現在、年間160万円のボーナスがあるということですが、今後はコロナの影響でボーナスが減少する可能性もあるとのこと。今後は入ってきたボーナスの半分を繰上げ返済に充て、残り半分を貯蓄に回すと考えていきましょう。

なお、将来の老後資金に関しては、ご主人が60歳で満期となる個人年金に加入していて、満期保険金は720万円となる予定です。定年退職以前に住宅ローンの繰り上げ返済ができていれば、ひとまず老後資金は今のままで問題ありません。

使途不明金がこの家計の問題点

実は、この家計には少し気になる問題点があります。「転職で収入ダウンした場合の…」のところで少し触れたのですが、育児休業中でも4万2,000円×12ヶ月=年間50.4万円のペースでお金が貯まっているはずなのですが、100万円から貯金がなかなか増えていないという点が気になりました。

お子さんのための支出やその他大型支出に対しても月々の収入からお金を取り分け、計画的にやりくりしているようですが、実際は、貯蓄やボーナスからもさまざまなお金が出て行っているようなのです。把握しきれていない使途不明金の存在が、貯蓄の邪魔をしているようです。

この問題を直視しないまま、育休復帰後に転職をして収入が減少すると、ここで描いた青写真のようにお子さんの教育費を貯められなくなります。

暮らしにはさまざまなイレギュラーな支出が存在します。こうした「その他支出」が月々の取分けで賄えるようになり、ボーナスが住宅ローンの繰り上げ返済と将来のための貯蓄にしっかり回せる家計になれば、転職して収入が手取り20万円程度に減少しても、ライフプランはうまくいきます。

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