はじめに

住宅ローンの繰上げ返済をするべきか

2023年までは住宅ローン控除対象ですので、少なくともそれまでは繰上げ返済をする必要はないと思います。ご相談者のデータから計算すると、現在の月々の住宅ローンは約7万3,000円程度と考えられます。早期に住宅ローンを繰上げ返済して、その分を教育費に充てたいというお考えなのかもしれませんが、上記のグラフを見ていかがでしょうか。

残債2,000万円のうち、預貯金から1,000万円を繰上げ返済すると、試算では、9年間の返済期間を短縮でき、圧縮できる利息は約140万円となりました(知るぽると「しっかりシミュレーション」金融広報中央委員会)。しかしながら、ご相談者の場合、今後50歳までが教育費のピークなので、9年間短縮しても教育費の充当には間に合いません。

家族がいつも健康とは限りません。突発的な出費に備えるためにも、子どもの教育費が終了するまでは、手元に預貯金を残しておくことをお勧めします。

「返済減額型」を利用する方法も

それでも早期に繰上げ返済を考えるのであれば、返済期間を短縮するのではなく、月々の返済額を減額する「返済額減額型」を検討しましょう。

現在の預貯金から1,000万円を繰上げ返済すると、圧縮できる利息は約93万円となり、返済期間短縮型よりも効果は薄れますが、月々の返済額は約3万6,000円程度に減額できます。差額は使ってしまわず、資産運用しながら45歳に向けて貯蓄します。

プロフィールにある「親ローン」とは、どちらかの親から資金援助があり、返済をしていると認識しました。このまま返済を継続するか、子どもの教育費が大変な時期は返済額を減額してもらいながら返済するということも考えましょう。

今回の試算は、いただいたご相談者のデータから、最も厳しい条件を想定しました。昨年は年間350万円も貯蓄を増額しているご相談者ですから、おそらくご相談者の残業代の収入がかなりあり、ご夫婦のしっかりした家計管理によって、この試算よりも余裕のある家計だと推察します。

今後45歳まで、順調に貯蓄することができ、3,000万円になれば、余剰分を住宅ローンの繰上げ返済に充てることは可能と思います。

資産運用を検討するなら「つみたてNISA」

現在、ご相談者と奥様はともに投資経験がないようですね。

ご相談者は公務員なので、定年まで安定した収入を見込まれます。公的年金は厚生年金と一元化しましたが、いわゆる三階部分の「年金払い退職給付」があります。老後資金に特化して検討するなら「iDeCo(個人型確定拠出年金)」も考えられますが、ご相談者の場合は、必要な時に引き出すことができる「つみたてNISA」を検討してはいかがでしょうか。

つみたてNISAは、毎月定額(年間40万円が限度)を20年間非課税で積み立てることができる制度です。対象となる商品は金融庁が選定した投資信託(公募株式投資信託とETF)に限られているので、一般的に低リスクで初心者向けとされています。

先のグラフでもわかるように、ご相談者の場合は、教育費の負担が早く終わるため、老後資金の準備は教育費が終了してからで十分に間に合います。今回退職金を考慮しなくても、65歳時に3,000万円以上の預貯金を残せる試算となりました。

住宅のリフォームや車の買い替え、夫婦での旅行、子どもの結婚資金援助等でお金を使いながら老後を楽しむためにもコツコツ時間をかけて少額から資産運用していきましょう。

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