はじめに
売却すべきか否かは老後資金の準備状況から判断する
売却せずに年間300万円の貯蓄を続けていくと10年間で3,000万円(iDeCo、NISA込み)となります。運用成果によっては、現在の貯蓄と合わせて5,000万円を優に超える老後資金の準備ができるかもしれません。
また、プロフィール欄の“老後資金:60歳まで勤めれば120万円ぐらい”との記述を年金額と読み替えると、退職後も今と変わらない生活が年金だけで送れることになります。
次に、新築あるいは築年数の浅いマンションに住み替えた場合を考えてみましょう。
例えば、売却額5,000万円のうち住み替えの予算は4,000万円までとし、残り1,000万円を運用にまわすとします。
新たな「終の住処」を確保した上で、老後資金の一部にもなるまとまったお金を手にすることで、毎月の貯蓄額を抑えることができ。生活にゆとりができます。売却時点での貯蓄総額は2,800万円となります。
デメリットは、売却代金を新居の購入資金に充てるため、購入のタイミングがずれると一旦アパート住まいとなり、家賃が発生します。また、職場への通勤や生活環境が大きくかわることも考えられます。
5,000万円で売却できれば、今の生活を極端に切り詰めて貯蓄しなくても楽に老後資金と新たなマンションを手に入れることができると判断して売却するもよし。今の生活のまま、コツコツと毎月の積立て投資でお金を増やしながら老後資金を準備するもよし。老後資金の見通しが立つことで、マンションを売って投資でお金を増やす必要があるか否かといった判断もつきやすくなります。
相談者様が必要とする老後資金がいくらになるのか備えを確認した上で決められたらいいと思います。
最後に、運用をする場合の注意点をお伝えしておきます。
基本は3つの「分散投資」で運用する
売却益を投資信託で運用する場合、一度に全額購入することはお勧めできません。大きく減らすようなことは避けたいですよね。その為には資産・地域・時間を分けるといった「分散投資」が基本の考え方になります。
資産分散は、株や債券、リート(不動産)といった異なる値動きをする銘柄にわけて投資を行い、地域分散は、投資先を国内と国外、あるいは先進国と新興国といった国や地域にわけます。そして購入回数をわける、時間や時期の分散といった3つの分散によってリスクを抑えることができます。
具体的には、国内外の債券や株式に25%ずつ投資する「4資産」や、国内外のリート(不動産)を加えた「6資産」の投資信託を毎月少しずつ数年に分けて購入する形をとっていくのが良いと思います。
思いがけず高値で売買されている現状を知り、売却に心が揺れ動いたようですが、今後のライフプランをどう描くのかよく考えてご判断ください。また、一馬力の相談者様は体が資本ですので、健康には十分気をつけて良いお年をお迎えください。
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