はじめに

「失敗する理由」を学ぶ

円建て資産のみ保有することへのリスク対策、外貨の高い利回りへの期待、少額の資金でも取引を可能にする「レバレッジ」といった仕組みなどは、ほかの投資とFXの代表的な「違い」であり、だからFXを取引してみたいと考える理由になっている可能性はあるでしょう。ただ、確かに「違い」ではあるものの、それがそのままFXの優位性ということではありません。

一方で、FXについてはリスクが高い割には、安定的に利益を上げるのが難しい、「FXを取引している人は大半が損をしている」といった悪評も根強くあります。ただ、FXで失敗するにはそれなりに納得できる理由があり、その多くはFXの特徴に対する無理解があるのではないかと考えます。そうであるなら、「失敗する理由」を学ばないことには、FXで安定的に利益をあげるのは難しいのも事実です。

そこで本連載では、FXの特徴を正しく理解しながら、「失敗する理由」を学び、FXの「優位性」を活かすことを目的に、お届けしていきます。というのも、まさにメインタイトルである「間違いだらけのFXトレード」が、まだまだ横行している可能性があるからです。

そんな代表例と言えそうなケースが、FXと国内投資の「違い」で、おそらくFXを選択する投資家の理由の上位につねにランクしそうな「相対的に高い外貨の金利」ということです。これについて、ただ「名目金利が高い」ということを意識すると、「通貨の値上がり益など期待せず、高い利回り収入確保を第一に考える中長期保有がよい」という考え方もよく耳にしますが、その判断こそが、実は間違いかもしれません。後でも詳細に述べますが、高い金利とは、経済学的には国内の物価の上昇(インフレ)を反映している結果という見方もできるからです。

ところで、物価の上昇とは、文字通り「物(モノ)の価値が上がる」という意味ですから、相対的には「通貨価値が下がる」という意味になります。この結果、インフレを反映した高い金利の通貨は、中長期的には通貨価値が下がることになります。

以上のように見ると、高い利回りが魅力の外貨、いわゆる高金利通貨ほど中長期的な価格の下落リスクがあります。買った水準によっては、一旦下落すると、その後は二度と買った水準まで戻らず、せっかくの金利収入も価格の値下がり損失で帳消しになるリスクがあるため、必ずしも中長期的に「買って塩漬け」にしておいて良いということにはならないのです。

相対的に高い外貨の金利ということは、国内投資などとの「違い」ではありますが、それだけで「優位」ということではありません。この「違い」を、どうやって他の投資に対する「優位」にし、資産を増やすことに役立つようにするか、それを理解することこそがこの連載の目指すところです。

このため、「失敗」の実例をあげながら、間違いは何だったのか、どうすれば良かったかなどについて、わかりやすい解説を目指していきたいと考えています。これからFXを始める人はもちろん、これまでFXをやってきたものの上手くいかなかった、さらにこれまでも一定の成果は上がってきたがもっと成果を上げて長く取引したい、といった方々にも参考にしていただければ幸いです。

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