はじめに

「売り」からも始められるのはFXの大きな特徴の一つです。ただ、本来的に不確実な相場予想に偏り、確実性の高い金利差を無視したことによる「失敗例」について、前回は紹介しました。

今回は、低金利通貨のユーロの売りで「成功」と「失敗」の両方を経験したケースについて紹介したいと思います。


2015~2016年の「ユーロ売りブーム」

欧州統一通貨のユーロ、そしてユーロ圏の中央銀行はECB(欧州中央銀行)ですが、そのECBは2014年に先進国では初めて、政策金利をマイナスに引き下げる、マイナス金利政策を決めました。この結果、ユーロは基本的に円以上の低金利通貨となり、金利差の観点からは、まさに売りに適した通貨となりました。

代表的な低金利通貨の円に対しては、ほとんどの外貨が円より金利が高いため、外貨を売る取引の場合は金利差収益であるスワップポイントは支払いとなるケースが普通です。ところが、ユーロは数少ない例外で、対円での売り取引でも逆にスワップポイントがプラスになり、そうでなくても他の外貨売りに比べたらスワップポイントのマイナスが僅かですから、売りに適していますし、さらにそんなユーロが下落すると、価格変動でも利益が出ることになります。

こうしたユーロ売りのFX取引が、一部の投資家に大きな利益をもたらし、ちょっとしたブームとなったのは2015~2016年でした。2014年12月に150円手前で頭打ちとなったユーロは、2016年6月に110円を割れるまで下落が続いたのです(図表1参照)。

【図表1】ユーロ/円と5年MA(2010年~)
(出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)

この頃は、米ドル/円も比較的大きく下落しました。米ドル/円は2015年6月の125円から、2016年6月には100円を割れるまで下落したのです。ただ最大下落率で見ると、米ドルはユーロほどではありませんでした。それよりも大きかったのは金利差、スワップポイントでしょう。低金利のユーロは、売り取引のスワップポイントにおいて、明らかに米ドルより有利だったわけです。

私は当時、あるFX会社で投資教育の「学校」の責任者の立場にありましたが、その「学校」で学ぶ多くの方々がユーロ売りの取引を行い、そして大きな利益を出していたことを覚えています。この頃は、まさに「ユーロ売りトレードの天下」といっても良かったでしょう。

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