はじめに
経済指標としてのGDPの考え方
GDPは一年ごとのものですが、経済の状況を把握するためには四半期GDP速報をチェックすることが必要だと考えます。
四半期GDP速報は第一次速報、第二次速報、確報値があり、第一次速報は当該四半期が終了してから1ヵ月半程度で発表されます。その後1ヵ月程度で数値が改訂された第二次速報が発表され、確報値は4ヵ月半後に発表されます。
GDPは個人消費、設備投資、政府の支出、輸出入などで構成されますが、最大の項目は家計の消費活動を示す「民間最終消費支出」で、約56%を占めています。また、個人消費と並ぶ国内民需の柱である「民間企業設備投資」が約15%。この他、政府部門では公共投資を示す「公的固定資本形成」や「政府最終消費支出」、また海外の需要を表す「輸出」などがあります。
GDPには価格変動が含まれる「名目GDP」、価格変動を除いた「実質GDP」があります。名目GDPはモノやサービスの付加価値を合わせたもので、実質GDPは名目GDPから物価の変動を除いたものです。つまり名目GDPは値段の変化、実質GDPは量の変化といえばわかりやすいでしょうか。
物価上昇の局面では名目GDPがかさ上げされるため、経済成長率を見る場合には、実質GDPを用いることが多いです。また、経済成長率はGDPが1年間でどのくらい伸びたかを表わすものです。経済が好調なときはGDPの成長率は高くなり、逆に不調なときは低くなります。
日本の名目GDPの規模は2010年に中国に追い抜かれて以降、米国、中国に次ぐ3位となってはます。国ごとの物価の違いを示す購買力平価でGDPを換算すると、中国、米国、インドに次ぐ4位となっています。
またGDPは、国内の経済活動の総和ですので、人口の多さに影響されることが考えられます。そこで平均的な豊かさを示す指標としては、GDPを人口で割った一人当たりGDPがよく用いられます。2021年末の時点で一人当たりGDP の1位はルクセンブルク、2位シンガポール、3位アイルランドとなっており、アメリカは7位、日本は24位となっています。実質GDPに対して一人当たりGDPの順位で、日本が大きく下がってしまうのは円安進行と、世界の経済成長と比較して、平成に入ってからは日本の経済は成長しなかった、といえるからだと考えます。
2022年第1四半期(1〜3月) GDP を読み解く
それでは、改めて5月18日(水)に内閣府が発表した2022年第1四半期(1〜3月) GDPを見ていきましょう。
前の3ヵ月と比べた実質の伸び率が年率に換算してマイナス1.0%で、まん延防止等重点措置でGDPの半分以上を占める個人消費や公共投資が減ったことが主な要因です。物価の変動を除いた実質の伸び率は前の3ヵ月と比べてマイナス0.2%です。項目別では輸入が新型コロナのワクチンなどの医薬品など輸入増で伸長している模様です。
財務省が4月20日(水)に発表した2021年度の貿易統計速報で、輸出額から輸入額を引いた額が5兆3748億円の赤字で2年ぶりの貿易赤字となっており、原材料高を背景とした物価上昇=コストプッシュインフレが懸念されているなかで、消費が横ばい、内需も横ばいといった状況だと言えます。
つまり今回のマイナス成長は、消費活動や公共事業の縮小を受け、景気が下降していることを示しています。