はじめに

「常識」で考える相場の転換点

もう一つの代表例として、2015年8月に中国による突然の通貨切り下げがきっかけで、世界的な株価暴落、リスクオフとなった「チャイナ・ショック」があります。当時の米ドル/円のチャートを見てみましょう。2011年10月の75円から、2015年にかけて既に4年以上、50円もの米ドル/円上昇となっていました(図表参照)。円安の過去の実績を少しでも知っていたら当然ですし、そうでなくてもこんなに長く続いた円安は、「常識」で考えると転換するリスクにも注意を払うべきかもしれない、と想像できたのではないでしょうか。

こうお伝えすると、「後から言われても、渦中では対応し切れない」と言われるかもしれません。ですが、永遠に続く相場はないので一方向への相場、この場合は米ドル高・円安が長く、大幅な動きとなっていたのですから、徐々に相場の転換へも注意を払っておく必要があったのではないでしょうか。

相場の転換へ注意を払うとは、この場合なら具体的には「1.米ドル買い・円売り取引での利益をしっかり確定する」こと、その上で「2.徐々に米ドル買い・円売りの取引を縮小する」といったことです。

コツコツと積み上げてきた利益が、ある日突然「ショック相場」に巻き込まれた結果、ドカンと吹き飛んでしまったのは、そもそも利益を確定せず「含み益」のままでいたか、または引き続き一方向へ大きな取引を行っていたためと考えられます。そのため、相場が逆方向へ大きく動いたことで、積み上げた利益を吹き飛ばすほどの大きな損失に見舞われてしまった、というケースが基本でしょう。

今から振り返ると、2011年から4年以上も続いた米ドル高・円安は、実はこの「チャイナ・ショック」の起こる少し前、2015年5月に終わっていました。ただ、それは後になってから分かることで、「チャイナ・ショック」が起こる前、米ドルはまだ高値圏で推移していたので、長く続いてきた米ドル高・円安がもう終わった、と考えていたのは少数派だったことでしょう。

このため、依然として為替市場は米ドル買い・円売りに大きく傾斜した状況が続いていた可能性がありました。そこに「チャイナ・ショック」が起き、リスク回避としてこの場合は米ドル急落となりました。大きく米ドル買い・円売りに傾斜した取引には大量の損失が発生、その損切りのドル売り・円買いが一段と米ドル急落を拡大させるところとなった−−この時の「コツコツドカン!」のメカニズムは、そのような流れだったのではないでしょうか。


「コツコツドカン!」は、運悪く「ショック相場」に巻き込まれたという面もあります。ただ多くの場合、長く続いた一方向への相場の転換期に起こりやすい現象でもあります。一方向への展開が永遠に続くことはないので、相場の転換を警戒し、それに備えていれば「ドカン!」は回避できたかもしれないのです。

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