はじめに

現状維持のケースからシミュレーション

さて、このような状況の中で、相談者さんの働き方をどうするか、ひいては世帯年収をどれくらい増やせばよいかということですね。

現状維持のケースから考えてみましょう。毎月の貯蓄は7万円、ボーナスからの貯蓄は60万円、年間では144万円です。子どもの成長にともなって増える生活費は、夫の収入の昇給分でまかなうとして、年間144万円の貯蓄を60歳になるまでの19年間続けることができれば、2,736万円になります。現在の貯蓄と投資の総額1,450万円、退職金の2,000万円を足すと60歳時点の資産は6,186万円です。ただし、途中で教育費の支出があります。中学・高校までは公立(生活費と併せて教育費もその年の収入から出して貯蓄の取り崩しはしない)、大学は私立文系で卒業後すぐに就職するなら、大学の教育費(受験料等を含む)を1人550万円として2人で1,100万円。これを差し引くと残りは約5,000万円です。60歳時の住宅ローンの残債は金利が不明のためわかりませんが仮に1,600万円として、これを貯蓄で一括返済すると残りは3,400万円になります。

60歳時に3,400万円の老後資金と住宅ローンが終わった自宅があるということです。ただし、お子様が希望する進路を実現するために教育費がもっとかかれば、60歳時の貯蓄残高は3,400万円よりも少なくなります。また、車の買い替えや住宅のリフォーム費用は考慮していません。水回りは10年程度をメドに、戸建なので屋根や外壁のメンテナンスも10年から15年程度をメドに必要になります。こういった費用を差し引くと、60歳時点での資産はもっと少なくなりそうです。あくまで仮定による概算ですが、2,000万円台といったところでしょうか。

現状維持の場合、老後はどうなる?

公的年金は15~20万円程度を予測されています。夫が公務員で、妻も以前は正社員だったことから、2人合わせた公的年金額は25万円前後から20万円台後半くらいはもらえる可能性があります。公的年金からも税金や社会保険料が天引きされるので手取りは85~90%程度です。住宅ローンが終わっていれば、子どもが自立した後の夫婦2人の生活なら、公的年金の手取りの範囲でなんとか収まるかもしれません。ただし、老後にどんな生活をするかによります。もし、生活費が公的年金で足りなくて貯蓄から取り崩しが必要な場合は、収支管理をしっかり行う必要があります。

公務員の夫の収入は安定していますが、逆に言えば大きく収入を増やすことはむずかしいので、現状維持の場合は、貯蓄のペースを維持することと、支出が増えすぎないようにコントロールすることが必須です。

つまり、妻の収入の増加が家計のゆとりにつながります。教育費をもう少しかけたい、老後の生活に余裕を持ちたいと思うなら、やはり収入を増やすことです。

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