はじめに
繰り上げ返済のデメリットも考える
一方で、繰り上げ返済のデメリットもあります。デメリットは大きく3つです。
(1)住宅ローン減税
住宅ローン減税は、対象期間のおける年末残高の0.7%(ご相談者は旧制度により1%)が所得税・住民税から控除される制度です。繰り上げ返済することで、年末残高も減少するので、利息軽減効果はありますが、ローン控除出来る金額も減少します。ご自身の所得税額と照らし合わせて、利息軽減効果とローン控除どちらが効果が高いかを確認する必要があります。ご相談者のように、ローン減税期間が終了してから繰り上げ返済を考える場合は考慮しなくても大丈夫です。
(2)手元資金がなくなる
繰り上げ返済をするということは、その分手元からお金がなくなるということです。住宅ローンの返済以外にも、教育費や自動車の購入など資金が必要なタイミングがあります。思わぬ出費があった際に手元にない、ということがないように計画を立てる必要があります。また、一般的に他のローンと比べて住宅ローンは金利が低く優遇されているため、繰り上げ返済にこだわることで、手元資金がなくなり、他でローンを組むのであれば、住宅ローンにしておいた方が効果的です。
(3)団体信用生命保険の効果
住宅ローンを組むと、基本的には団体信用生命保険に加入します。これは、死亡や高度障害の保障をベースに、最近はがんなどの特約が付加されていたり、保障が充実している団信もあります。
仮に3,000万円のローンがある時に万が一お亡くなりになった場合は、3,000万円のローンは完済され、その後のローン負担は無くなります。もし、事前に1,000万円の繰り上げ返済をしたとすると、残債は2,000万円になりローン負担は軽減されますが、その状態でもしお亡くなりになった場合、同様に2,000万円のローンは完済されますが、手元にあった1,000万円も繰り上げ返済に支払ってしまった状態となってしまいます。保障としての機能は弱くなってしまうということです。
利息軽減効果とのバランスを考えて
このように、ローン控除の期間が終わったからといって、積極的に繰り上げ返済をすれば良い訳ではなく、ご自身のライフプランや保障としての観点から繰り上げ返済計画を立てる必要があります。
ご相談者の場合、仮にローン減税が終了するあと4年経過後に年間100万円ずつ繰り上げ返済をしていくと、繰り上げ返済にトータル1,100万円費やし58歳でローン完済できる試算となります。その際の利息軽減効果は約236万円です。一方、もし一度に1,100万円を一括で繰り上げ返済した場合は、57歳でローン完済となり、利息軽減効果は328万円です。
すなわち、利息軽減効果だけでみれば、約90万円の差があるので早めに一度にまとまった金額を繰り上げ返済する効果はありますが、その分手元から大きな資金がなくなり、団信の効果も減少します。
ご相談者は貯蓄も運用を含め潤沢に準備できています。収入が減少したとしても、病気等のアクシデントが無ければ、大きな問題は無いように見受けられます。返済の仕方に正解はないので、ぜひご自身のライフプランや考え方に合った返済を目指していただければと思います。
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