はじめに
投資の視点−−「ラグジュアリー」なブティックホテル
新型コロナウイルスの感染拡大で家計の貯蓄が積み上がっています。日銀の試算では、消費されずに貯蓄に回った額は2021年末時点で約50兆円にまで膨らんでいます。
もちろん、将来の不安から引き続き貯蓄に回すことも考えられますが、強制貯蓄の中からある程度の金額が消費に向かうことは十分に考えられます。特に、私が注目しているのが「ラグジュアリー」なブティックホテルです。
これまでホテル業界は、万人受けする老若男女のどんな層にも訴求できるものを作ってきました。しかし、対極にあるのがブティックホテルです。ターゲットを明確に決めることで、その層だけに居心地の良い体験や空間を提供する考え方に基づいてホテルを展開していきます。
日本では、まだプレイヤーが少ないものの、欧米では拡大傾向です。海外のブティックホテルは米マリオット・ホテルの「W」や、米エースホテルが当てはまります。「W」ホテルは大阪に上陸、エースホテルは京都に初上陸した時に、大きな話題となりました。ブティックホテルのようなターゲットを絞った事業展開は、ファンを獲得し、リピーターを大切にすることで安定的に成長が可能となります。消費者の求めるものが多様化する中で、全方位的にサービスを展開することは、今の時代には限界があります。
そして「ラグジュアリー」という定義も変化しています。1990年代まではラグジュアリーと言えば「格付」「格式」「値段が高い」というものでしたが、今では金銭的なものだけをラグジュアリーを指すわけではなくなってきています。「非日常」を味わえる空間や、サービスそのものに対して「ラグジュアリー」を指すようになっています。