はじめに
事業所得と雑所得の違い
さて、雑所得として年間20万円を超えるようになり確定申告が必要な場合、「開業したほうが良いのでは?」と思われる方も多いと思います。その違いについて解説します。
雑所得を「事業所得」といえるようにするには、現行の法律では次の条件が必要です。
(1)事業として一定の規模でずっと行っている(生計が立てられるぐらい)
(2)「開業届」を税務署に提出している
基本的には、税務署に「開業届」という用紙を提出するだけで「私は事業主です」と名乗ることができるようになるのですが、ある程度の規模がなければ「雑所得でしょ?」と言われてしまうということです。
それでは、開業届を出して「事業主です」と言えるようになると、何が起こるのでしょうか?
・雑所得でなく事業所得で申告をすることになる
・収入金額がどんなに少額になっても、毎年確定申告をしなければならない
・事業としての収支を帳簿につけなければならない
(青色申告の承認を受けた方は複式簿記のきっちり帳簿、白色申告の方は単式簿記のざっくり帳簿)
・青色申告なら55〜65万円、白色申告なら10万円をもうけの金額から引いてもらえる
・経費を使いすぎて利益が出ず逆にマイナスになった場合、そのマイナスを他のもうけから引いてくれる
・青色申告の場合はマイナスを3年間繰り越してプラスになったときに差し引きしてくれる
このように違いを見ると、事業所得として申告ができた方が、税金の計算上おトクになるということがわかります。このおトクな制度を悪用して税金を安くしようとしていた会社員が多く出てきたので、これを取り締まろうというのが、8月にパブリック・コメントが提出され話題となっている「事業収入300万円以下は雑所得」というルール改定です。
特に給料がメインの収入の方は、今年の2022年(令和4年)分からもうけ金額が300万円を超えなければ「事業じゃないよね?」と言われるように、ルールが変更になる可能性がありますので、注意が必要です。
副業で開業届は出すべき? 出すとどうなる?
「事業収入300万円以下は雑所得」とするルールが無かった昨年までの確定申告では、事業所得のお得な制度が活用できるので、会社員の副業でも「早めに開業届を出しておこう」という方がほとんどでした。しかし、副業収入300万円以下となり雑所得でしか申告ができないなら、開業届を出したとしても「帳簿をつけなければならない」「事業主として毎年確定申告しなければならない」と手間が増えるのに、「雑所得として計算される」とうことになります。
つまり、帳簿をつけて準備したのに、手間だけかかっておトクな事業所得の制度は全く使えないということです。なんて……嘆かわしい!
まだ、最終的にどのような取り扱いになるか確定はしていませんが、「パブリック・コメント」の内容を見ると、上記のようになる可能性が高いというのが現状です。今後の動向に注目しておきましょう。