はじめに
お金の面から見たのが「フィナンシャル・ウェルビーイング」
というわけで、ここから先は日本人のウェルビーイングを大きく左右するお金について、深掘りしていきましょう。お金の面からウェルビーイングを見る考え方は、「フィナンシャル・ウェルビーイング」という名前で呼ばれています。
ひと口にお金といっても、日々の生活費であったり、将来のイベントや万が一に備える資金であったり、いろいろです。用途や目的、どの程度自分でコントロールできるかなど、考え出すとなかなか複雑ですね。
そこで、お金の役割を「家計管理」「負債」「資産形成」「万が一への備え」の4つの角度からスポットライトをあてて考えてみましょう。
1. 家計管理
ズバリ、支出がご自身の収入の範囲内におさまっているかどうかです。今月は赤字だとか、余裕があるとか、日ごろから意識していますか? 銀行の預金通帳を見ればわかることですし、最近では家計簿アプリでチェックすることもできますね。家計の収支を管理することが、フィナンシャル・ウェルビーイングの出発点になります。
収入と支出の大小関係を把握しておかないと、お金を使いすぎたり、クレジットカードの残高が膨らんでしまったりして、計画的に貯蓄や投資をすることが難しくなってしまいます。また、ローンの返済に支障をきたすかもしれません。今月は余裕があるから繰上げ返済をしようといった決断もしにくくなりますね。
2. 負債
住宅ローンや自動車ローン、あるいはクレジットカードのリボ払いなども大きくいえば負債に入ります。みなさんは月々のローン返済額が収入に占める割合のどれくらいであるかを把握していますか。返済額が多すぎると、なかなか貯蓄は進みません。
かといって、欲しいもの、やりたいことを何でもかんでもお金が貯まるまで我慢していると、タイミングを逃してしまいます。戦略的に負債を利用して、今を楽しむ、という手法を知っておいてもいいですね。
3. 資産形成
お金を貯める、あるいは投資をして増やすことです。老後準備のような長期の資産形成と、旅行資金や教育資金の積立といった短期のものに分けて考えるといいでしょう。
4. 万が一への備え
ケガ・病気や失業などで収入が減ってしまう、災害にあって家財を失ってしまう、といった事態は考えたくはないものですが、もし発生してしまったら、貯蓄だけでカバーするのは難しいかもしれません。また、誰かからすぐにお金を借りる、というのも困難かもしれません。こうしたリスクは保険などの手法でヘッジしておく必要があります。
お金には色がない
本来、お金には色はついていなくて、時と場合に応じて以上の4つの機能のいずれかが最前線に出てきて活躍をするわけです。4つの役割はつながっており、それぞれに行き来があることをぜひ知っておきましょう。
今年度から高等学校で金融教育が始まり、学生はお金の収支の管理から勉強しているようです。社会人のみなさんはどうでしょうか? 会社がマネー教育を提供してくれた、という方もいるかもしれません。
しかし、その場合、いきなり老後準備と投資の話から始まっていないでしょうか?「金融教育=投資教育」ではありません。お金にはいろいろな機能があり、それらは相互につながっている。このことを理解するのが、金融リテラシーを身につける最初の一歩になります。
次回は、職場でのマネー教育について見ていきます。