はじめに

なぜ金利を動かすのか

そもそも、なぜ日本銀行は金利を動かすのでしょうか。教科書的にいえば、景気が悪い時に金利を下げることで、家計や企業が借り入れをして消費や投資をしやすい環境を作り、逆に景気が過熱してくれば金利を引き上げて景気を冷まそうということです。

日本の2022年11月の消費者物価指数は前年同月比+3.8%と91年1月以来31年10か月ぶりの上昇となり、世論調査をみても日本銀行は金融緩和を解除すべきとの声も多くなっていることを確認しています。たしかに、現在進行形の物価上昇が需要の増加によって引き起こされているものであれば、教科書的には金融緩和は解除すべきなのでしょう。しかし、明らかにエネルギー価格や資源価格の上昇や円安という為替要因がおもな物価上昇の原因であり、決して需要が物価を押し上げている状況ではない中において、現時点における金融緩和の解除ならびに金利の引き上げが正しい行動なのかは今一度考えた方がよいでしょう。

私たちの生活に身近な影響という観点から「金利が上がる」ということを考えると、住宅ローンの返済負担が増えたり、企業が新たに投資をすることをためらったりしますから、従来であれば生まれていた雇用や所得が消えることを意味します。

住宅ローンへの影響

普段は金融政策に興味関心がない方にも、今回の政策修正には強い興味を持つ人が散見されました。やはりそれは住宅ローンの金利が上昇するかもという考えが浮かんだからでしょう。住宅ローンには大きく分けて固定金利と変動金利の2種類があります。日本で利用者が多い変動金利に適用される金利は銀行が提示する「短期プライムレート」に連動します。前述のように、今回日銀は利上げしたわけではありませんので、いまのところは変動金利に適用される金利は上昇していません。しかし、一方では10年国債の利回りは上昇しましたので、固定金利には上昇圧力がかかっています。

今後、日銀が本当に金融緩和を解除し、利上げをすることになると、いよいよ変動金利に適用される金利も上昇していくことになりますが、適用金利が変わっても5年間は毎月の返済額は変わらない「5年ルール」や、毎月の返済額は従来の1.25倍までしか増えない「125%ルール」があるため、毎月の返済額が金利の上昇に伴い青天井に増えていくという不安を抱えている人は安心してください。

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