はじめに
「予想できること」とは?
図表2は、前回も紹介した米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率です。米ドル/円が過去90営業日の平均値から、どれだけかい離したかを示したグラフなのですが、これを見ると、2000年以降のかい離率は概ねプラスマイナス10%前後の範囲を循環してきたことが分かるでしょう。
その上で、1月に一時127円まで米ドル/円が下落した局面では、同かい離率はマイナス10%近くまで拡大していたわけですから、これまでの経験からすると、米ドルはかなり「下がり過ぎ」懸念が強くなっており、別な言い方をすると、米ドル安・円高の短期的な「行き過ぎ」懸念が強くなっていた可能性があったわけです。
米ドル安・円高の「行き過ぎ」懸念ということですから、何かの「きっかけ」があっても米ドル安・円高への反応は限られ、逆に米ドル高・円安方向には、「行き過ぎ」の反動により大きく動くポテンシャルがあった、ということになるでしょう。
さすがに雇用統計の予想外の結果、「サプライズ」を予想するのは至難の業ですが、こういったことを理解していると、少なくとも大きく動くなら米ドル高・円安方向ということで、今回の雇用統計の結果を受けた米ドル急騰も、少しは落ち着いて受け止められたのではないでしょうか。
ちなみに、今回のように米ドル/円の90日MAかい離率がマイナス10%前後まで拡大したのは、2000年以降では主に4回ありました。その4回を米ドル/円のチャートで確認してみたのが図表3です。これらの多く、例えば2002年7月、2008年3月、同12月などは、米ドルが当面半年から一年の循環的な安値を付けていたタイミングでした。要するに、米ドル/円の90日MAかい離率が、今回のようにマイナス10%前後まで拡大したところは、当面における米ドルを買うタイミングであり、少なくとも売るタイミングではなかったと言えるでしょう。
折角ですから、今回とは逆のかい離率がプラス10%前後に拡大したケースについても見てみましょう。これも、2000年以降では主に4回あったのですが、その4回を米ドル/円のチャートで確認したのが図表4になります。例えば2014年12月や2016年12月などは、当面における米ドル高値を記録しており、その意味では米ドルを売るタイミングだったと言ってよいでしょう。
今回は、2月3日(金)の米雇用統計発表後に米ドル高・円安へ大きく動いたケースを取り上げてみました。雇用統計の結果を予想するのは簡単ではないでしょう。ただ、為替相場の「行き過ぎ」を確認することで、どちらに動くポテンシャルが高いかを確認するのは、ある程度はできそうです。「できること」「できないこと」を認識することは、FXトレードにおいて「間違い」を減らすための第一歩と言えるのではないでしょうか。