はじめに
3種類ある証券口座の違いは?
証券会社には口座の種類が3種類あります。「一般口座」「特定口座」「NISA口座」です。銀行口座を開設すると、初めに「普通預金口座」ができるように、証券会社の口座も初めに「一般口座」は必ず開設されます。
NISAの口座を開設したいなら、一般口座とは別にNISA口座開設の申し込みが必要で、NISA口座は1人につき1つの証券会社でしか運用することができません。この「NISA口座」というところで株や投資信託などの金融商品を買い付けることで、儲かった時の税金をナシにしてくれるということです。
一方、一般口座や特定口座で買い付けたものは、配当受取や売った時に儲けが出たりすると、20%チョイの税金がかかるということです。つみたてNISAをしている方は、投資信託の積立商品しか買付ができませんので、企業の個別銘柄の株を買いたいという場合、一般口座または特定口座で買うことになります。一般でも特定でも、配当金については必ず20%チョイの税金が事前に引かれて、残りの金額が手元に入ってきます。
一般と特定の違いは、一般口座で買付したものは売買の儲けについて、自分で計算して確定申告して納付することが必要で、特定口座で買付したものは、配当も売買の儲けも全て全部ひとまとめにして税金の計算を自動でやってくれるという口座です。
特定口座では税金の手続きについて、取引のつど税金の計算を勝手にやって税を天引きしておいてもらえる、「源泉徴収あり」という設定をすることができます。特定口座で買付をし、配当受取や売買益が出た場合は、1月1日〜12月31日の取引分の儲けを集計して、ひとまとめにして税金の精算一覧表をもらうことができます。「特定口座年間取引報告書」という、この一覧表は確定申告の資料として用いることもできます。
特定口座を設定していない場合は、一般口座で売却したものについて、税金の精算がされていませんので、自分で確定申告をして儲けに対する税金を計算して、税金を納付する必要があります。
「自分で手続きするのが面倒」という方は、特定口座を開設して「源泉徴収あり」にしておくと、確定申告は必要ありませんからオススメです。
確定申告をした方がいいケースは?
特定口座で源泉徴収ありに設定しておくと自分で申告する必要がなく、証券会社から1年分の取引報告書が届いたとしても「へぇ〜」と寝そべりながら眺めるだけで良いのか〜、ですって? なんて…嘆かわしい!
実は、特定口座で税金が事前に納付されている場合でも、確定申告すると税金が返ってくることがあります。
通常、株に関する配当のもうけや売却した時の儲けは「分離課税」と言って、他の収入やもうけとは違うくくりで計算して、所得税の税率は一律で15.315%です。ただし、このうちの「配当金」による儲け分(配当所得)については、確定申告をする時に「総合課税」と言って、他の収入やもうけと同じくくりで計算してもらうこともできます。
例えば、給与が年収300万円の人は所得税率が5%になり、配当所得を「総合課税」で一緒に計算すると、配当に対する税率も5%になるので、15%の税率で計算されるよりも所得税の金額が10%分も安くなります。同様に、給与が年収400万円の人も、所得税率が10%になるので、配当所得を「総合課税」で一緒に計算すると、配当金に対して5%分の所得税が安くなります。
いずれの場合も、住民税の税率が5%アップすることになりますが、令和4年分の確定申告書には「住民税に関する事項」という入力欄で、「住民税の方では配当を確定申告しなかったことにしてください」と指定することができます。
「え、本当にいいんですか?」と思うようなありがたい話ですね。ただし、これができるのは今回が最後です。令和5年分からは、所得税と住民税は申告内容をそろえなさい、というのが決定してしまっています。
反対に、給与が年収1,000万円なら所得税率は23%になります。配当所得を分離課税のままにしておけば配当分の税率は15%で済みますから、「総合課税」で一緒に計算すると分離のときよりも8%分の税率がアップすることになりますから、給与年収が1,000万円を超える方は申告しない方が有利なケースもあります。