はじめに
シャッター通り商店街が生まれる理由
山田:先ほどの有野さんの「家を建てれば固定資産税が安くなる」というお話ですが、固定資産税には「住宅用地特例」という特例があり、敷地に人が居住できる家が建っていれば、固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1になるんです。
有野:また新しい税金が出てきた、面白そう! 都市計画税ってなんですか?
山田:都市計画税は、「市街化区域」内の土地や家屋を持っているとかかる税金ですね。住宅や商業施設などが並んでいるような場所は、だいたいこの「市街化区域」に該当します。税率は、固定資産税が先ほど少し触れましたが原則として1.4%、都市計画税は自治体によって若干の差はありますが、上限が0.3%と決められています。
三輪:1.4%や0.3%って聞くと、それほど高くないような気もしちゃいますけど……。
有野:でも、不動産やと分母が大きいもんなぁ。
山田:たとえば、固定資産評価額が1,000万円の土地を持っているとしましょう。家が建っていない更地だと、固定資産税の1.4%と都市計画税0.3%の合計で、年間17万円を税金として納める必要があります。ところが、住居が建っていると、「住宅用地特例」によって税金は約3万円まで下がります。
三輪:家が建っているのといないのとで、そんなに違うんですね!
有野:毎年17万円は厳しいけど、3万円なら何とかなるか、って思ってしまうよなぁ。
山田:全国で空き家が増え、「空き家問題」は社会問題化しているのも、これが大きな要因の1つになっています。家を壊して更地にするのにもお金がかかりますから、それなら家を壊さずにそのままにしておけばいいか、となるわけです。国土交通省の「「空き家等の現状について」によると、2018年までの20年間で、全国の空き家の数は394万戸から848万戸まで、2倍以上に急増しているんですよ。
三輪:遺産分割で揉める原因になることも少なくないですね。兄弟のどちらかが親と同居していて、親が亡くなった時に、更地にして売れば大きな利益を得られるけど、もともと住んでいた方は、このまま住み続けたいと主張するケースとか。この場合、住んでいない方は、更地にして売却して得られるお金を、住んでいる方に要求したいですよね。その方が相続で取得できる金額が多くなるので。
有野:親が亡くなったからって、同居して最後まで親の面倒見てくれた兄ちゃんとこに、「俺の取り分頂戴」って言うても、「家売らんとそんな金ないで」って言われるやろ。かといって、家売ったら兄ちゃん住むとこないし、そもそもみんなの思い出が詰まってる家を売ってくれなんて、俺は兄ちゃんに言われへんで。でも家で話したら、嫁がカンカンで「お兄さんは今まで家賃払ってないじゃない! ウチはずっと賃貸なのに!」って言われたら、「もうちょっと考えようか」って保留にするかなぁ……想像しただけでも、心がキュウって縮まるな。
山田:そういう理由で、空き家がめちゃくちゃ増えているんです。現在では東京でも「シャッター通り商店街」を見かけることが少なくありませんが、それも「このまま残した方が、税金が安くて済む」ことが大きな要因になっているんですね。
有野:へぇ、そういうことやったんや! なるほどなぁ、長年の疑問が解決してスッキリしたわ〜。