はじめに

「遺言書」と「エンディングノート」の違い

井戸:遺産分割協議では、揉め事がないのが一番ですが、やはりお金に絡むことなので、どうしても揉めるケースが少なくありません。

有野:多いから揉めると思ってたけど、少なくても揉める。「あるんやったら欲しい!」って、それは思いますよね。でも、揉め事を避けるには、やっぱり遺言書とかエンディングノートを用意しといたほうがいいんでしょうね。そういえば、遺言書とエンディングノートって、どう違うんですか?

井戸:勘違いしている方もいるようですが、遺言書は民法の規定にキッチリのっとったものでないと、遺言書とは言えません。口頭による伝言はもちろん、本人が書いたメモ書きだったり、本人の言ったことを第三者が書き記したりしたものは、正式な遺言書にはならないんです。エンディングノートは、あくまで本人の意向を残すための「メモ」ですし、遺言書としては扱われません。

有野:封筒に入れて閉じて「遺言書」って書いてたらいいんじゃないねや! 「それは効果がありませんよ」って、相手の弁護士に言われたりするのか。まさにドラマで揉めそうな感じのやつですね、「お前が遺言書を改ざんしたんだろ!」とか(笑) それで、一生懸命書いたのに「エンディングノート」はメモ程度かぁ。まあ、いろんなパスワードが書いてる、しっかりした「メモ」か。

井戸:遺言書は、自宅で保管していると紛失や発見されない、もしくは有野さんがおっしゃるように改ざんされるリスクがあるので、「遺言執行者」に指定した弁護士か貸金庫に預けておくといいかもしれません。実は、2020年から法務局が自筆の遺言書を預かってくれる制度がスタートしたので、法務局に預けるのでもいいと思います。

有野:法務局が預かってくれる! へぇ〜、国が個人の遺言書を預かってくれるんや。これは改ざん出来まへんな。でも、国に預かってもらう遺言書って、規定があったり、なんか大変そうですね。「字が汚いから書き直し」とか言われたら嫌やなあ。ちゃんと用意しておかないといけないものなんですか?

井戸:遺言書でできることは、主に財産の処分、相続、婚外子などの認知や相続人の廃除など。エンディングノートと比べると、遺産配分を自由に決められたり、相続人ではない第三者への分与ができたり、寄付をしたりなど、遺産配分に対して自由度が高いのが特徴です。正式な遺言書を残しておけば、遺産分割協議の開催も必要ありません。

有野:「世話になったから、マネージャーにも財産を残してやろう」っていうのは、エンディングノートじゃあかんってことか。でも、そんなん誰か残す人おったかなぁ……松竹芸能の後輩か? クロちゃんにも財産の一部を? 絶対散財されるやん、アカン。ん、前回もこんなん考えてたな(笑)

井戸:正式な遺言書は弁護士の立ち合いの元で作成する必要があるなど大変ですし、一般的なご家庭なら、エンディングノートを作成しておくだけでもいいと思いますよ。財産の内容をはっきりと書き残したり、感謝の気持ちを残したりするのは、エンディングノートで十分できますからね。法的な効力はありませんが、遺産分与に関して意向を伝えることだってできます。それに、エンディングノートには、本人の死後の対応や、この情報はどこに聞けばいいなど、連絡先が書いてあるので、親だけでなく、自分や配偶者用にも用意しておくと、意外と重宝するかもしれません。

有野:先生、僕みたいな「オタク」用のエンディングノートってないんですか? 高額でフィギュアを買い取ってくれる店や、高く売れそうなネットオークションの情報が書いてあるような。

井戸:ちょっと私にはわかりかねますね(笑)

有野:あったら割と便利だって思う人いそうなんですけどねぇ。もうお店には登録しておいて、「亡くなったらお電話1本で査定に伺います」ってなってたら、便利やねんけどなぁ。

井戸:有野さんが作ればいいんじゃないですか、「有野がおすすめするオタク用エンディングノート」って(笑) 出版社に企画を持ち込めば本当に作れるかもしれませんよ!

有野:おお、面白そうですね! ただ、自分のエンデイングノートもまだやのに、人の心配してる(笑)

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