はじめに
2つの「リスクの軽減方法」
その1.「時間分散」
リスクの軽減方法には、まず「時間分散」という方法があります。
こちらAさんとBさんがどういう投資をしたかですが、Aさんは投資金額を5万円ずつ8カ月に分けて買い付けした実例です。投資信託という商品を買っているので、1カ月目の値段は下に書いてあります通り、1万円となっております。その後、2カ月目には8,500円と値段が下がっています。3カ月目に7,000円、4カ月目に13,000円。それを5万円ずつ毎月定額で買っていくと、1カ月目に買い付けできるのは、5万円を1万円で割りますから5口買えます。2カ月目には、値段が下がっているのでたくさん数量を買えるわけです。5.9口です。その後さらにまた7.1口と増えてたくさんの数が買えます。その結果、8カ月目に買い付けできたのは42.8口です。
一方、Bさんはどうしたかといいますと、1カ月目の最初に40万円1回で買い付けしています。こうすると1カ月目で買い付けできるのは40口です。40万円を1万円で割りますから40口。結果的に、8カ月目のこのときの資産価値を見てみますと、Aさんは42.8口を買っていますから8カ月目の時価価値は514,000円です。Bさんは最初に買ったものが1口12,000円になってますので480,000円。Aさんのほうが実際には時価評価が上がっていますね。これがいわゆるドルコスト平均法です。価格が安いときほどたくさん買えて、価格が高いときは数が少なくなることで買い付け単価の平準化ができるということなんです。
これは皆さんご存じと思います。今が高いのか安いのかは後になってみないと分からないわけですよね。そういったときには、毎月毎月買っていくことを選択するほうが、結果として合理的な投資行動になるケースが多い、ということです。
積立投資の肝は、まず価格が上がったり下がったりすることをうまく利用できるわけです。要は上がったり下がったりしなければ、最初にまとめて買ったほうが有利なんですね。例えばずっと上がることが分かっていれば、最初にまとめて買ったものを寝かせておけば、その方が一番利益を得られます。そういう商品はないわけです。上がったり下がったりして、結果下がってしまうと買わないほうがいいという話になってしまうんですけど、この積立投資の最終的なゴールは、一時期は下がることがあったとしても最後に上がる。そこを期待できる商品を買うのが一番重要なんですね。
後ほどお話ししますけれども、積立投資はその出口、積み上がった資産を換金して使うのをどこで決断するのかが大事なんですね。積立投資が万能ではないのは、先ほどお話ししましたように、だんだん積み上がったものが最後大きく値下がりしてしまうと、いくらうまく運用しても最後の最後で、例えばリーマンショックのような大きな値下がりを受けてしまうと今日、竹川先生がお話ししていたような形で、たとえ10年積立したとしても結果が得られないことがあります。
ただ、どちらかというと時間を味方にしながら、少しずつ貯めていって、価格変動の間に買い付け単価を平準化する効果を得ながら、最後は皆さまが決めたゴールに達したときには、換金を決断できるようにしていただくのが一番うまくいく方法だと考えております。
その2.「資産の分散」
これも言わずもがなでありますが、A商品とかB商品というのはそれぞれの値動きをしてます。それぞれ特徴があります。それを組み合わせることによってリスクを軽減することができるわけです。
よく投資の格言で「卵を一つのカゴには盛ってはいけない」というものがあるんですね。これは例えば、一つ商品に投資していると、卵を一つのカゴに盛っていると、それを落としてしまったら全部割れてしまう。いろいろなカゴに分けておけば、一つのカゴを落としても他に卵が残っているということです。
ただこの話には少し続きがありまして、卵を例えば4つか5つのカゴに分けていても、一つのカゴに入れていたものを落としてしまったら、やっぱり損なんですね。それではこの話は投資の格言としては生きないんですけども、実は残ったカゴに入ってる卵が雛になって、それから親鳥になってまた卵を産む。それによって資産が増えていくということも実は言っています。
つまり、投資には時間が必要、という長期投資のことも、この格言では言っているんですね。
実は、もう一つこの格言がいっているのは、卵でないとダメなんですね。カゴの中に入ってるものがガラスコップだと割れると元に戻りませんし、残ってるカゴに入ってるガラスのコップも増えない。なので、この中に入れるものは卵。要は、長期的に増えるだろうと期待できるものに投資しなければならないということです。じゃあ、そういったものは何なのかを考えていく必要があります。
こちらの図、これは最近、日経新聞の中で紹介されていたんですが、長期・積立・分散投資の効果ということで、この赤いところに書いてありますように、国内、先進国、新興国の株、債券に6分の1ずつ投資した場合です。95年から投資を始めると80%値上がりしてますよと。年率でいうと約4%で回っています。真ん中のところは、国内の株、債券に半分ずつ投資した場合です。これでも38%増えてまして、失われた20年で日本のマーケットは非常に悪かったということであっても、長期に分散投資をすれば、約2%で運用できているというわけです。一方、定期預金に預けていると1.3%でしか回っていないということになります。
真ん中の2008年から2009年にかけて株が大きく下がっていますし、99年のところも下がっています。このように、やはり大きな変動要因があるんですね。2008年はリーマン・ショック。99年にはITバブルの崩壊がありました。ですが長期・積立・分散投資では、この2008年~2009年にかけて価格が下がったところでさらに買い回しをしていくわけで、結果としてその戻りのところで利益を享受できる。今日もいろんな先生がおっしゃっていましたが、続けるということが非常に大事なわけです。