はじめに

iDeCoの税制優遇

iDeCoには3つの場面で税制優遇があります。年金というと遠い将来のことに思われるんですが「今、お得」というのがiDeCoです。

税制優遇その1:「小規模企業共済等掛金控除」

「小規模企業共済等掛金控除」という長い名前の控除です。所得控除として全額引けますというものですが、12月に会社から受け取っている源泉徴収票で今現在の課税所得がいくらなのかを必ず確認してください。

年収から給与所得控除を引いて黄色のところ、所得控除というのがあります。ここにiDeCoの掛け金が入れられるわけです。この黄色のところが大きくなればなるほど、課税所得のオレンジの筒が小さくなりますよね。そうすると、所得税はご存じのように累進課税ですから、課税所得が低かったら所得税率が低くなります。だから課税所得が小さくなるほうが当然いいわけです。

2番から3番を、給与所得後の金額から所得税の控除を引く。そうすると今の課税所得が出ます。iDeCoは、所得が高くなればなるほど、さらに有利になるということです。ここにiDeCoの掛け金、上限はありますけど、例えば年間20万にしようかなと思ったら20万円引きになります。ご自身でどういう効果があるのかが見て取れるんですね。

一律10%の住民税にも反映されます。ご存じのように住民税は1年遅れでやってきます。例えば課税所得が300万の人がiDeCoに月23,000円払うと、55,200円の効果があるのですが55,200円キャッシュバックになるわけではありません。年末調整で所得税が安くなり、次の年はもう1回住民税も安くなるということなんです。

課税所得でいくら効果があるのかを確認しておかないと分からなくなっちゃうんですよね。なので、ぜひこういう表を見て確認いただければと思います。

税制優遇その2:「運用益への非課税」

資産運用をすると、プラスになれば運用益というのが出ますよね。運用益に対する税率は約20%なんですが、それも非課税になります。ここに税金がかからないということは、大きく雪だるま式にお金を長期で育てていけるということです。せっかくお金を貯めて育てていっているのに、その度に20%を払うと大きくなりませんよね。

税制優遇その3:「退職所得控除と個人年金等控除」

退職所得控除と個人年金等控除は要するに、受け取るときに税金が安く済みますよということです。こちらはまだまだ先のことなので、そのときに考えていただいたらいいと思うのですが、ゴールは60歳が原則です。

年金の受領年齢を70歳まで引き延ばし受け取る年金額を増やす、という話がありますよね。「増えるのはいいけど、その間どうするの?」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこの橋渡しをするのがiDeCoです。

iDeCoと繰り下げをして増えた公的年金で、平たくずっと同じような収入を作っていき、亡くなるまで公的年金を得るのが、私は一番ベストな方法だと思います。収入が高いところを作ってしまうと社会保険料が上がります。平たくずっともらえる作戦を考えるのがいいのかなと思います。

「じゃあ、iDeCo始めようかな」と思った方にまずしていただきたいのは、自分で運営管理機関の金融機関を選ぶということです。その際は、商品・手数料・サービスの3つのポイントを抑えることが大事です。

運用商品の選び方

iDeCoは積立をして、それから60歳まで長期で運用する、ここは決まり事です。そして、自分で行うのは分散投資です。自分で資産全体の分散投資をどう考えるのか。それによって収益を上げやすいのか、そうでもないのか、が決まってきます。

意外と誤解が多いのが、iDeCoは1個しか商品が選べないと思われていることです。複数ある金融商品から複数購入できます。定期預金も選べますし、中でいろいろ工夫することができるのです。

「スイッチング」というのをご存じですか? 要するに、リバランスできるのです。1個のものを持っていたら、経済状況が変わったら、そのバランスが崩れてきますよね。それを元に戻すのをリバランスというのですが、要するに、手数料がかからずにバランスを自分で取ることができるんです。

株を50、債券を50にしていたけれども、株価が上がって株が70、債券が30になったとすると、入れるお金を債券にするのか、株を売って債券と50に合わせるのか、そういうふうにスイッチングしていくわけです。リバランスを他のところですると手数料がかかりますが、iDeCoの中では手数料はかかりません。ただ、ファンドによっては「信託財産留保額」というのがかかる場合もあります。そのファンドを売ったら他の人に迷惑がかかる場合は、迷惑料みたいなのを払ってね、というイメージをしていただいたらいいと思います。

もう一つ、リバランスできる方法があります。最初に分からず定期預金でスタートした際に、iDeCoの中で定期預金をしても非課税メリットが得られず、全然お金も増えないからやっぱり分けようかなと思ったときに、この配分を変えることができます。これももちろん無料です。国内株投資とか、外国株、国内債券、外国債券の基本の4資産に、1万円を25%ずつ配分して自分で組み合わせるということも可能になっています。

iDeCoで得た利益は非課税です。非課税ということは、益が出る商品はiDeCoに置いていたほうがいいわけです。投資信託とかはiDeCoの中にあったほうがいいですよね。定期預金のような、利息がそんなにつかない商品だったら課税のところにおいてもいいわけですよね。それが「アセット・アロケーション」といいます。場所を入れ替えるだけで100万円の運用が1年間で8,000円くらい変わってくるというシミュレーションもあります。

ですから、iDeCoがすべてではありません。どこにどの資産を置くか、ぜひご自分で考えていただくことが大事だと思います。

つみたてNISAを活用

つみたてNISAは、20年ずっと非課税で積立ができます。対象は主に株が入った投資信託だけで、株そのものや毎月分配のものは買えません。金融庁が非常に厳しくつみたてNISA用の商品を厳選しているんです。それを年間40万、20年ずっと積み立てることができる。20年経つと課税口座に移すか、取り出して使うことができます。

今のNISAだと5年なので、5年たったらどうしようかと悩まれる方もいらっしゃると思いますが、つみたてNISAは20年なので、とりあえずずっとやっておけばいい。20年置いておいてもいいのですが、お金が必要なときやすごく益が出て使いたいときには引き出せばいいのです。

引き出すときに注意していただきたいのは、iDeCoとの違いです。iDeCoだと、売り買いをしても手数料がかからない、運用する中でスイッチングや配分変更ができて、60歳までやめられないとはいえ自由度が高いのです。

ですが、つみたてNISAは、投資信託を売ると、その枠から外れちゃうので、年間40万円の枠はもう使えないのです。来年また始めるという感じになるので、売ったらそれっきりという形になります。

どういう使い方をするのかというのは、それぞれお客さまのお考えとかご家族の構成とかいろいろあると思うので、うまく利用されたらいいと思います。つみたてNISAは、20歳以上だったら何歳でもできますし、40万、20年、そうすると800万ですよね。できれば800万ぐらい持っておきたいよねとお話ししたと思います。なので、70歳とか何歳でもいいのですが、つみたてNISAでうまく800万を作れば、もし具合が悪くなったときにそれを下ろしながら使う、という作戦が取れるわけです。

色んな使い方ができるので、家族で利用する制度を組み合わせてり、優先的に使う制度を決めてみてください。家計をもう一度見直して、積立額をこっち側に回したらどうかな、というのを考えていただくとよいと思います。

どういう商品がいいのかは第2部に橋渡ししようと思いますが、まずは始めることだと思います。

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