はじめに

第2部「制度を使いこなす、ポートフォリオのつくり方」

投資の必要性と非課税メリット

杉浦氏: 第2部は、セミナー応募時にいただいたご質問からお題をいくつか頂戴しまして、質問に答える形で、パネルディスカッション形式で進行させていただきます。さて井戸さん。第1部では、制度についてご説明いただきましたけれども、運用についてのポイントが3つあったかと思いますが。

井戸氏: そうですね。改めて「資産が増える黄金の3原則」ということなのですが、「積立」「投資」「節税」です。証券投資に関する全国調査によると、投資の必要性を感じてらっしゃる方は、やはり預貯金だけで十分な利息が得られないからというのが理由ですし、必要と思わない方は、踏み出せないからという理由の方もいらっしゃるようです。投資についてきちんと理解をしていただいて、少しでも早くスタートしていただければと思いますね。

杉浦氏: 初めて投資をするのならば、普通の銀行窓口で買ってもいいんじゃないかなと思われる方も多いかもしれないのですが、実際にiDeCoやNISAでうたっている「非課税メリット」というのは、どれぐらい大きいのでしょうか。

井戸氏: 利益が非課税になるメリットというのは、とにかく長期投資なので、このグラフのようにすごく影響が大きいですよね。

佐藤氏: このグラフは毎月2万円を積立投資して、年率3%で30年間運用した場合のシミュレーションです。ご覧の通り、30年後には100万円以上の差が出ていることが分かります。

井戸氏: でも同じ30年だから、15年ずつ区切ったとしても、0~15年のこの開きは、最初はグラフが重なってますよね。15~30年のほうが開きがぐんと広くなるということは、やっぱり長く続けると効果が大きいということでしょうか。

佐藤氏: そうですね。あと、やはり運用の面から見ても、リターンを上昇させるためには相応のリスクを取りにいかないといけないのですが、一方で非課税メリットは、リスクなしでリターンを上昇させることができる方法ですから、制度の活用も投資手法の一つと考えると、とても魅力的な投資手法ということは言えますね。

杉浦氏: なるほど。取られなかった税金分をリターンに上乗せできると考えると、やっぱり非課税口座というのはメリットのある口座だと考えられますね。さらにこれは、売却益の非課税分だけを計算していますけれども、iDeCoだと掛け金の所得控除とかもありますよね。

井戸氏: そうですね。掛け金分の控除もあります。ここは運用している場面だけなので、他の効果と合わせて見ていただくととてもいいです。

積立投資にする理由

杉浦氏: 次に「既に預金が貯まっていれば積立投資にせずに一括投資してもいいんじゃないか」という質問です。預金からの投資も積立投資にしたほうがいいのでしょうか?

佐藤氏: まずは積立投資のメリット、こちらをきちんと理解したうえで、今ある預金についてどちらにするかを選んでいただきたいと思います。積立投資というのは、定時定額で購入することを言い、投資の世界では「ドルコスト平均法」と呼びます。メリットはこちらです。

  • 定時に買うことで、つまりは複数の回数に分けて定期的に買うことで「時間分散」を行なえるので、購入価格を平均的にできる
  • 定額で買うことで、「安いときには、多い数量」「高いときには、少ない数量」という条件で購入できるので、平均購入単価自体を引き下げることができる

基本的に投資というのは「いくら投資して、いくらになったのか?」を考えるので、合計の視点で見ていきたいと思います。

投資した金額がいくらになるのかを「投資成果」とすると「価格×数量」が投資成果になります。一括投資の場合は、投資を行った時点で保有数量は決まってしまい、その後の投資成果は価格によって上がったり下がったりして、ハラハラドキドキするわけですよね。

一方で積立投資の場合は、積立期間中にどんどん数量を積み増していくので、価格が下落したときはむしろ多く買うチャンスと捉えることができます。このように合計の視点で見ると、積立投資は目先の短期的な値動きに惑わされず、「長期的な視点で投資ができる」というメリットが見えてくると思います。

杉浦氏: 積立投資は、上がったら利益を確定したくなるなど、いっときの感情に惑わされない仕組みとしてもいいですし、安いときに多く高いときに少なく買うという特性上、プラスにしやすく投資効率もいいんですね。

預金がある程度貯まっていて長期的な運用ができるお金ならば、つみたてNISAとかiDeCoとかを使うこともできると思いますし、逆に短期で引き上げたいお金だったり、「これなら儲かる」と自信があるような場合はNISAを選ぶのが良いかと思います。目的に応じてうまく制度を利用していただけたらと思います。

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