はじめに
定年前に行っておくとよいことは?
今回は定年後の家計収支を見ていきました。定年前の人にとって最も重要なことは、自身の生涯のライフサイクルの中で家計の支出額がどのように推移していくかをしっかりイメージすることです。そして、そのうえで定年前に生涯にわたって家計を維持するために何をすべきか考えてみましょう。
これらのデータをみたときに、定年前に行っておくとよいことがいくつか見えてきます。
まずは、年金保険料をしっかり納付することです。高齢期の家計の収支を分析したとき、中核にあるのはやはり公的年金給付になります。少子高齢化の中、公的年金制度は信用できないという意見もありますがそれは正しくありません。将来の年金受給権が過去の年金の支払い実績に応じて決まる以上、しっかりと公的年金保険料を支払うことが、高齢期の家計を維持していく上で最も基本的な対策になります。
そのうえで必要なこととして、私的年金も手段としてあります。特に、自営業など公的年金だけでは不安がある人は私的年金に加入することを考えてもよいと思います。
次に、住宅を取得しておくことも重要です。生涯借家という選択肢自体を否定するわけではありませんが、高齢期に家賃負担があるとたちまち家計は逼迫します。定年前に住宅ローンを支払いきるくらいの計画で住宅を取得しておけば、高齢期の生活に安心できます。
そして最後に、無理なく働き続けることです。定年後は、40代や50代の時と違って無理をして限界まで働く必要はありません。自宅から近いコンビニの販売員や飲食店の接客業など、未経験でも始めやすい仕事は様々あります。たとえ小さな仕事でも、目の前に人の役に立つ仕事はたくさんあるのです。特別な専門性を要する仕事が、人の役に立つ良い仕事であるとは限りません。
また、地域のシルバー人材センターには高齢期に就業できる様々な仕事情報があります。働く日数や得られる収入に限りがありますが、他の仕事と組み合わせるなど、生活状況に応じて活用してもよいでしょう。
老後は、負荷をかけすぎず、月数十時間でもいいので、無理なく続けられる仕事を念頭におきながら生涯のキャリアを描いていけばいいのです。