はじめに
療養後に退職しても、65歳までは金融資産でギリギリ生活できる見込み
ここまで休職して療養することを前提にお話を進めてきましたが、今回の一番のご相談のポイントは、「何歳まで頑張って働き続けたら会社を辞めてもいいのか」でしたね。そのために、老後資金の見通しを立てたいということでしたので、そちらに移っていきましょう。
ご相談者さんの現在の金融資産は、貯蓄2,000万円+投資400万円=2,400万円です。これに、退職金300万円を加えると、退職時に2,700万円を金融資産として用意できることになります。
ご相談者さんは現在50歳。今後、療養生活を1年半送り、51歳6カ月で退職をしたとします。退職後はそのまま働かなかった場合、65歳の年金受給開始までは、13年6カ月の期間があります。1年あたりの生活費を200万円とした場合、200万円×13.5年=2,700万円となり、計算上は、現在の金融資産で65歳まで、ちょうどぴったりで余裕はまるでないもののなんとか暮らせる計算です。
65歳以降の生活は?年金でシミュレーションする際の注意
続いて65歳以降の生活を見ていきましょう。公的年金は年間150万円受給の見込みです。1カ月あたり12.5万円になります。最初に記入していただいた生活費が月額12万円でしたので、年金生活に入っても一見、生活できそうな金額に見えます。
ただし、ここで2つ確認していただきたいポイントがあります。一つ目は、この150万円という年金額は、何歳まで働くことを前提に試算されているのかということです、現在の50歳で退職することを前提にしたものか、もともと想定していた55歳リタイアを前提に試算したものか、はたまた60歳まで今のまま働き続けた場合を前提にしたものでしょうか。50歳以上の方に書かれたねんきん定期便では、いまのまま60歳まで働き続けた場合の将来の年金受給額が書かれています。もし、ご相談者さんがねんきん定期便をご覧になっている場合、早期退職をしたらねんきん定期便よりも年金が減ることになります。
二つ目は、ねんきん定期便やねんきんネット等で試算された年金額は手取りではないということです。社会保険料や税金を差し引くと、実際は試算額よりも15%~20%程度手取りが減ると思っておいた方がよいでしょう。
公的年金が手取りで12.5万円期待できない可能性が大きいこと、生活費も月額12万円ではなく、年間200万円(月額16.6万円)程度は見込んだ方がよさそうなことを考えると、65歳以降を公的年金だけで生活するのは困難です。65歳時点でこれ以上取り崩す貯蓄がないことを考えると、早い段階でのアーリーリタイアメントは無理がありそうです。