はじめに

老後の収入を「見える化」する

老後の資金にご不安があるとのことなので、まずは、老後にどれくらいのお金を準備したら良いのかを考えてみましょう。考え方としては、老後の年間収入から老後の年間支出を差し引いた金額が年間で足りない生活費の金額となります。そこで、老後の年間収入の柱となる年金の金額をざっくりとでも良いので、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などを利用して確認しておきましょう。

ご相談者さんからの情報によると、老後の年金はご夫婦2人合わせて月額約20万円とのこと。公的年金は75歳までの繰り下げ受給を希望しているようですね。仮に75歳まで繰り下げると、本来受給できる金額の84%増額になるので、月額約37万円になります。

次に老後の資金準備として、iDeCoと小規模企業共済をやっていらっしゃるとのことなので、こちらを試算してみます。

【iDeCo】
毎月11万円掛金を拠出しているとのこと。44歳から60歳まで毎月11万円をiDeCoに拠出し、4%の利回りで運用できたとして試算すると、60歳の時に約2,950万円になります。現在のiDeCoの残高915万円と合わせると、3,865万円となります。

【小規模企業共済】
毎月7万円掛金を拠出しているとのこと。加入の詳細はわかりませんが、44歳から60歳まで加入するとして、60歳で共済金Aプランで受け取るとすると、約1,520万円となります。現在の小規模企業共済の残高470万円と合わせると1,990万円となります。

iDeCoも小規模企業共済も掛金の全額が所得控除となり、所得税、住民税も安くする効果があります。今回は所得控除による節税分は考慮していませんが、節税分も貯蓄に回すことができればさらに老後の準備資金は増えます。

上記の結果から60歳までにiDeCoと小規模企業共済合わせて、5,855万円になる予定です。

老後の支出を「見える化」する

では、次に老後の主な支出を考えてみましょう。老後の生活の主な支出は、(1)日常生活費、(2)臨時出費、(3)医療費・介護費です。

老後の日常生活費の年間支出は、現在の1カ月の生活費を12倍すれば、おおよその金額がわかります。ただし、老後の生活費は現役時代の生活費の7〜8割になるともいわれます。総務省統計局「家計調査」(2019年)によると、70歳以上の生活費は現役時代(50歳〜59歳)の生活費の68.1%となっています。ですから、現在の生活費の7割として試算しても良いでしょう。

参考までに2019年の家計調査を利用して、1カ月の生活費の平均を見てみましょう。

高齢夫婦無職世帯の実収入の平均額は、23万7,659円、支出の合計(消費支出+非消費支出)は、27万929円です。この金額は持ち家を前提とした衣食住の基本生活費です。ご相談者さんは、賃貸暮らしもお考えのようですので、この金額に10万円程度を上乗せします。となると、約37万円の生活費がかかるということになります。

家を売却するのか、人に貸すのかによっても試算が変わってくるかとは思いますが、今回は話をシンプルにするために、生活費が37万円かかるとして試算します。

老後の収支をシミュレーションしてみよう

75歳から公的年金を受け取ることをご希望されているようなので、60歳から74歳までは、iDeCoと小規模企業共済の資金を取り崩すとします。

公的年金を受給されるまでは、月数万円の収入を得られるお仕事をしていたいとのことでしたので、65歳までは月に15万円の収入、66歳からは毎月7万円収入を得るとします。

◆60歳から65歳までの取り崩し金額
22万円×12カ月×5年間=1,320万円

◆66歳から74歳までの取り崩し金額
30万円×12カ月×8年間=2,880万円

取り崩し金額の合計は、4,200万円

これに加えて、医療費や介護費用を準備しておきたいところです。目安は1人あたり500万円です。さらに、臨時出費として「家具・家電の買い替え」「家のリフォーム代」「レジャー費」「冠婚葬祭費」「子どもの結婚資金の援助費用」「孫への援助費用」などがあります。

60歳までにiDeCoと小規模企業共済合わせて、5,855万円になる予定ですから、基本生活費と医療費、介護費用までは賄えそうですね。75歳以降は、繰り下げ受給をすると、月額37万円受給できるので、基本生活費は賄える試算になります。

老後も旅行に行ったり、それぞれのお子さんへの資金援助などを考えていたりする場合には、上記を踏まえた上で、今後の貯蓄や60歳以降の収入についても検討してみてください。

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