はじめに
マーケットのテーマとAIのロジックを考える
最近は、AIやアルゴリズムが台頭してきていますので、「AIやアルゴリズムに勝つためにはどうすればいいか」についても常に考えています。
AIやアルゴリズムはスピードが速いのが特徴です。たとえば、アメリカの雇用統計の数字は世界中のトレーダーが注目していますが、数字が良かったときには、瞬間的にAIの買いが入って、相場が上がってしまいます。人間のスピードでは間に合いません。
とすると、AIやアルゴリズムに勝つためには、速さ以外で勝負をしなければならないのです。
そのためには、AIがどんなロジックで動いているかを知る必要があります。といっても複雑なものではありません。たとえば、「雇用者の数が増えたら買う」、それだけです。
誤作動を狙ってAIを出し抜く
そのときの速さで勝てないとすれば、AIの間違いを狙うのが1つの方法と言えます。たとえば、雇用統計の数値が発表されたときのマーケットのテーマが「雇用者数」だとは限りません。
最近で言えば、アメリカの場合、インフレがどうなるかが大きな関心事になっています。「雇用者数」よりも「インフレ指標」の重要度が高くなっているのです。雇用統計の発表時には、賃金の上昇率も公表されます。いまのマーケットであれば、そこを見なければいけません。賃金の上昇率が高ければ、インフレ懸念から利上げ(引き締め)を想像しなくてはなりません。
それでもAIは、雇用者数の増減だけを見て、買ったり売ったりします。それによって一時的に相場は大きく上がったり、下がったりしますが、いずれは賃金の上昇率が反映された相場になっていく可能性があります。
実際に賃金が下がって、インフレが鈍化しているのであれば、ドルは売りになります。AIに正面から勝つことを考えるのではなく、AIが気づかない部分で出し抜くことを考えるのが成功のポイントになります。
歪みや盲点を常に意識しておけばAIに勝てる
言い換えれば「歪みがどこにあるか」、「盲点がどこかにないか」を常に意識しておくのがポイントです。その点では、AIよりも人間のほうが、まだまだ優秀だと言えます。
AIの買いで上がったとしても、マーケットが注目してない材料で上がったのであれば、AIが売り場を提供してくれたと考えることもできます。
最近のように新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻など、誰も経験したことがない出来事が起きているときには、相場に歪みが生じやすくなります。その歪みをトレードに生かせないかを考えておく必要があります。
もう1つ、経済指標の結果によって、リスクリワードは上と下どちらに優位性があるかも考えなくてはなりません。経済指標の結果が良ければ上がる、悪ければ下がる、がセオリーですが、上がるときの飛距離はどうか、下がるときの飛距離はどうかを考えるのです。
下がったときの飛距離のほうが長いと思うのであれば、経済指標結果の確率が50%だとしてもショートで勝負できます。上と下どちらに飛距離が出るかの判断ですが、テクニカル的に言えば、ロスカットを巻き込みそうな値位置にあるかどうか。ファンダメンタルズ面ではマーケットの織り込み具合をはかります。織り込み具合とはマーケットが良い結果(悪い結果)を先取りして動くことがあるので、そのようなモメンタムであればその逆サイドを狙いに行きます。