はじめに

「経済指標」で景気を判断しようとしていませんか

1 改定される経済指標

経済指標は、各国政府や中央銀行が発表する経済に関する統計で、経済状況を構成する要因(物価、金利、景気、雇用、貿易など)を数値化したものです。これらは経済の状況や変化を把握するために重要な指標です。

しかし、経済指標から今の景気を判断するのは、意外に難しいのです。なぜなら、米国GDPや雇用統計など、(1)発表時期が遅い(既に過去のデータ)、(2)速報 → 改定 → 確定と数値が何度も修正される、という指標が多いからです。それらは、今までの景気・経済を確認・判断する上では非常に有効ですが、分析に時間を要する、分析結果で見解が分れるなど、残念ながら“今”を反映しにくいという特徴(難点)があるのです。

もちろん、今の景気を判断する上で有効な経済指標もあり、米国の「ISM製造業景況指数」はその1つです。これは、のちほど本書に何度も登場します。

つまり、経済指標は、判断したい景気・経済によって、指標を使い分け、分析する技術を要する専門性の高いデータなのです。

データが修正される経済指標の例

米国GDP(国内総生産)
「一定期間の間に国内で生み出された物・サービス等の付加価値の合計金額」と言われ、名目GDPと実質GDP(名目GDPから物価変動の影響を除いたもの)があります。GDPデフレーター(名目GDP ÷ 実質GDP)のプラス率が大きければインフレ、マイナス率が大きければデフレを意味します。発表は国により多少異なりますが、四半期ごとに速報値が発表れ、1ヵ月後に改定値が、更に1ヵ月後に確定値が発表され、速報から確定まで2ヵ月もかかります。

失業率や非農業者就業者数などの米国雇用統計
全米において、家計や40万件程度の企業や政府機関を対象に調査した雇用に関するデータで、金融政策の決定において重視される指標の1つです。これらは、翌月第1金曜日に速報として発表され、1ヵ月後に改定されるほか、毎年1月には前年の改定されたデータに対し更に年次改定(12ヵ月分が一斉に変更)が行われ、改定幅が大きいこともしばしばあります。金融市場は特に最初公表される速報値で一喜一憂させられます。

2 金利は景気の“今”を表す

金利は、その種類に関わらず、いずれも、(1)日次でデータの取得ができる(速報性)、(2)データが改定されない(確実性)、ことに加え、(3)個々の企業の影響を受けやすい株式などと違い個別要因が少ない、ことから“今”を反映しやすいという特徴があります。

つまり、金利は、経済指標に比べてシンプルでわかりやすく、過去はもちろんですが、“今”の景気を判断することに非常に適したデータなのです。

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