はじめに

2.安定した分配金

皆さんが投資するとき、初めての人であれば危険な博打(ばくち)的なことはやらず、分散投資をしましょうという言葉をよく聞くと思います。Jリートは、63物件を1つのリートで持っていますから、それだけで分散して投資をしていることになります。例えば、リートの保有するビルが万一災害にあったとしても、1つだけであれば全体の収益には大きく影響しないという、分散のメリットがあります。

リートはいろいろなタイプの不動産に投資をしています。オフィスだけにしか投資していないリートもあれば、オフィスと商業、住宅、あるいは総合的になんでも投資しますという、いろいろなリートがあります。どのタイプにも投資するというリートは、それだけでも分散が利いていると言えます。

オフィスの賃料というのは、比較的、景気に左右されやすいと言われているので、景気がいいと賃料も上がるけれど、悪いと下がるという傾向があります。ただ、住宅の賃料というのは、皆さんも20年、30年前から賃貸物件に住まわれている方なら分かると思いますが、それほど変わっていないのです。物価が変動しても、住宅の賃料はそれほど劇的には変わっていません。もちろん、新築物件は高いかもしれませんが、昔に比べてものすごく上がったという感覚はないと思います。それだけ住宅賃料というのは安定していて、景気にあまり左右されないということです。そういった賃料の動きについても、物件の種類によって違いがあるので、組み合わせることで分散効果を得られます。

次に地域です。Jリートは全国の物件を持っています。規模的に、どうしても東京が一番賃料が高いので多くなります。よく出る質問なのですが、一極集中で地震が来たらどうするのかという話があります。もし、東京に不動産がばたばた倒れるような地震が来れば、普通の株式会社も全部倒れ、株価も下がってしまうと思います。ですから、その辺のリスクというのは、株よりJリートが受ける影響が大きいわけではないかもしれません。不動産専門の資産運用会社は、基本的に地震のリスクにかなり耐えうる物件を選別して買っていますので、立派なビルが多いです。例えばJリートのオフィスビルの物件には「六本木ヒルズ」「虎ノ門ヒルズ」「品川シーズンテラス」などがあります。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、かなり大きなビルです。あれらのビルが、かなり高い震度の地震にも耐える構造になっていることはご想像の通りです。そういったかなり選別されたものがJリートに入っているということも安心感の1つだと思います。それに加え、全国に散らばっているという分散効果もあります。

その安定した分配金の源というのは、最初に説明した仕組みの中でも、皆さんが受け取る分配金は賃料ということをお話ししましたが、その賃料がどのように計算されるかというと、1つ1つの賃料水準×稼働率で決まってきます。それは各Jリートのホームページを見てもらうと、どのぐらいの賃料がもらえているかということが書いてあるのですが、過去の流れを見てみると、一番上がオフィスで景気に左右されやすく、ブレが一番大きくなっています。

Jリートの平均としては、Jリートの規模もどんどん大きくなってきているのでいろんな物件が入ってきて、最近は全体としてあまり変わっていません。長い目で見ても、賃料はそれほど変わらない傾向があります。住宅や商業の賃料は、もっと変動が少ないのです。商業については、20年以上賃料一定というような契約を結ぶことが多いです。

さらに、稼働率を維持しています。オフィスは、リーマンショックのときに会社の業績が悪くなりテナントが減ったのですが、その後戻ってきて最近は好調です。これは95%というラインで、一般のビルの稼働率はもっと低いです。リーマンショック後はもっと空いてしまいましたが、Jリートが持っているビルというのは、ある程度選別された大型の立派なビルが多いのでここまでに収まっているのです。長い目で見ると、賃料は結構安定しています。ですから、皆さんに払われる分配金自体がかなり安定しているということになります。

これはリートが生まれたときからずっと今まで持っていた人が、どういう収益になったかというシミュレーション結果ですが、分配金がずっと安定しているので緑のように順調に上がってきています。

それに対し、リートも株と同様に価格が下がることもあります。リーマンショックのときは下がりました。その値上がり益を見てみると、この青い棒グラフのとおり、リーマンショック後はマイナスになっています。ただ、この赤い線が緑色と青の合計なのですが、過去16年ぐらいを見ると、ゼロを下回ったことがないという結果になっています。ですから、リスクは全くないとは言えませんけれど、株よりは安定して確実に利回りが取れる商品だということが、これで結果的には言えるのではないかと思っております。

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