はじめに

ファンを生み出す「マーケティング戦略」

ここまでは、不動産投資で成功するためのプロダクト戦略についてお話ししました。インカムゲインを安定させるためには、ほかにも重要な戦略があります。それがマーケティング戦略です。

ここで、ちょっと手前味噌になりますが、当社の入居者様の声をご紹介させていただきます。

「空間そのものからクリエイティブな刺激をもらえます」
「理想的過ぎて、もう嬉しくてたまりません」
「やっと求めていた部屋に出会えました」

当社では、特別な部屋に価値を見出す入居者様を探しだしてきたわけではありません。こうした入居者様になるように、お客様を育てているんです。これがほかの不動産会社と圧倒的に異なるポイントです。

当社ではマーケティングに力を入れていますが、一般的に不動産会社はマーケティングはせず、「セリング」しかやっていません。

何年か前に『もし野球部のマネージャーがドラッカーを読んだら』という本がベストセラーになりました。経営の神様と呼ばれるドラッカーがマーケティングをどう定義しているかというと、「顧客創造」です。お客様をつくり出すのがマーケティングで、そこに販促するのがセリングです。

一般的な不動産会社が「マーケティング」という言葉を使うのは、広告や集客のときです。進学や就職などでワンルームマンションに住もうとする人たちに、「ウチの店舗に来てください」とCMを流すだけで、これではマーケティングとはいえません。本来、マーケティングとは「種まき」のことで、それをしないで集客だけすると単なる値引き競争になる。だから家賃が下がるんです。

本来のマーケティングは、ニーズをウォンツに変えて、まだお客さんになっていない層をどうやって顧客にするかを考えることです。ニーズとは、自分の欲しいものがわからないもやもやと不満な状態です。ウォンツというのは「具体的にこれが欲しい」という状態です。ニーズからウォンツに変えることが、マーケティングにおける種まきなんです。

具体例で紹介すると、世界中で人気の「エヴァンゲリオン」というアニメの世界観を再現したマンションが札幌にあります。これはファンにとってはたまらない物件です。エヴァンゲリオンの世界観をリアルに3次元で体験できるんですから。

ただ、ファンがもともとこんな部屋に住みたいと思っていたわけではなく、ファン心理をダイレクトに刺激するマンションを作ったことで、それを知ったファンの間で人気を呼んだのです。これがニーズをウォンツに変える行為です。もやもやとした状態を、具体的にこれが欲しいという状態に消化してあげるわけです。

当社でも同じような考えから、まずは住まいにこだわりを持つ層を囲い込む戦略を採っています。世の中には「普通のワンルームで十分で、家賃は安ければ安い方がいい」という層のほうが多く、ほとんどの不動産会社はこうした層を狙っています。これでは家賃を下げることでしか勝負できなくなるので、当社ではこうした層は狙いません。

効果的な戦略に、他社が追随しない理由

当社はまず、マンションをシリーズ化しています。「iCafeシリーズ」「Domaシリーズ」「Roughシリーズ」と名前をつけてイメージ展開するのです。人間は見たことがないものを欲求できないので、シリーズ化して見せるのが有効です。たとえば、漠然と高級車が好きという人には、ポルシェやベンツ、レクサスという具体例を見せてあげることで、どれが欲しいのかが明確になるんです。

とはいえ、種まきだけではビジネスにならないので、育てて収穫する必要があります。育てるという作業が「ブランディング」です。

具体的にいうと、まず当社の物件を気に入りそうな人が読むPenやCasa、BLUTUS、Figaroといった雑誌に露出を図ります。さらに同じ層が訪れそうなカフェやショップに、ポストカードを置いてもらうなどして認知度を高めます。その人たちを囲い込んで、約5,000人の会員組織にしています。

この組織に向けて、いろんなイベントを仕掛けるのです。たとえば、当社のリノベーション物件に住む人に来ていただいて懇親会を開催し、お部屋の自慢をしていただくんです。人とは違う特別な物件に住んでいる人ですから、喜んでプレゼンしてくださいます。そうすると、聴く人たちはこうした暮らしへの憧れをさらに強めてくれるわけです。

そもそもブランディングは180日以上かけて蓄積する必要があり、賃貸物件を探してる人だけを相手にしていては達成できません。当社では、部屋を探していない人も含めて長い時間をかけて囲い込むことで、「いつかリノベーション物件に住みたい」という人たちのマーケットをつくっています。センスのいい部屋、それに合う素敵な家具、その部屋で実現するライフスタイルなどの情報発信を通じて、住みたい気持ちが高まってきたところに、物件を投入するのです。

こうしたブランディングの結果、当社では2つの革命的な達成ができています。ひとつは入居者のうち、約半分が前の入居者がいる状態でお申込みいただいていることです。普通なら退去後にクリーニングが済んだ部屋を見てから契約するので、数か月は空室の期間が発生します。

ところが、当社の物件はシリーズ名から部屋のイメージがだいたいわかります。古くなっても価値が下がらないし、空室待ちができていることもお客様は知っています。そこで、退去が出るとわかったらすぐに申し込みを入れてくださるんです。このため、投資期間中の空室期間が短くなるのです。

もうひとつは、入居希望者が物件の場所を選ばないことです。普通は賃貸物件は通勤や通学に便利な路線で探すものですが、当社の入居者様はお部屋の大ファンなので路線にこだわりません。「iCafe」シリーズだったらどこでもいいとか、リズムの物件ならなんでもいいという人がたくさんいます。これがまさしくブランディングの効果です。

こんなにうまい戦略なら、同業他社が次々と追随してもおかしくないのですが、真似するところは出てきていません。なぜなら、お金をかけてリノベーションするとその分家賃を上げるので、入居者がつかなくなるからです。

賃貸物件を探す人のほとんどは、HOME'Sやアットホームなど、インターネットの賃貸物件検索サイトで探します。築年数や家賃、最寄駅からの所要時間などの条件を設定して検索するので、その段階で家賃の高いリノベーション物件は弾かれてしまい、永遠に入居希望者の目にとまりません。

結局、リノベーションはマーケティングやブランディングを一緒に行うから成功するのであって、リノベーションだけでは家賃競争に巻き込まれるだけなのです。カルティエやヴィトンにはブランドのファンがいて、そこに新商品を出すから高くても買ってくれます。当社でもまずファンをつくり、そこにイノベーション物件を投入することで、インカムゲインが安定する環境を実現させているのです。

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