はじめに

法人化や信託の活用など現金化以外の選択肢も

現金化以外に相続の手続きを簡便にするための方法として、法人化や信託の活用という選択肢も考えられます。これは法人や信託の形で財産を集約することで、名義変更の手続きの回数を減らそうという発想です。相続手続きの簡素化を主目的というよりは税対策や認知症対策が主目的かとは思いますので、あくまで簡単なご紹介のみとします。

●法人化
資産を管理する法人を作り、そこへ財産を移してしまえば、相続の際に発生する名義変更はその法人の出資持分のみとなるので、相続手続きの手間は大幅に少なくなります。法人の所有権たる株式・出資者の名義が変われば、法人の財産自体には名義変更はいらないからです。ただ、個人で財産を所有していれば所得税、法人が財産を所有することにより法人税になり、また、財産の法人移転にコストも掛かりますので、主としては法人化による所得税・法人税の税金対策を実行するかどうか考えることが一般的です。

●信託の活用
他に信託の活用という手もあります。信託とはもともと、自分の財産を信頼できる人や法人に託して、自分の決めた目的に沿って管理・運用してもらい、あらかじめ定めた人へ受益してもらうための制度です。信託には委託者、受託者、受益者の三者が登場し、それぞれ以下のような役割です。

委託者……財産を元々所有していた人
受託者……財産の管理や運用を託された人
受益者……財産からの利益を受け取る人

「家族信託」というものが有名です。ご自身の認知症対策(子どもを受託者にして、自分が認知症になっても子どもが財産の管理を行えるようにする)としてこの仕組みを活用したいという場合は良いのですが、そのような特別な目的がなければ、今回のようなケースではお勧めというわけではありません。

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