はじめに

それでも年金は破綻しない。しかし……

さて、では「年金は破綻するのか?」というと、答えは「ノー」です。なぜならば、日本の年金制度は(残念ながらですが)「賦課方式」なので、生産年齢人口の人たちに年金を賦課できる限り、破綻はしないのです。

ただし、蓄積している年金積立金が枯渇することがないわけではないでしょう。この「蓄積している年金積立金が枯渇すること」をもって、「年金が破綻する!」と騒ぎ立てる向きもあるようですが、それはまったくの見識不足と言わざるを得ません。「蓄積している年金積立金が枯渇すること」はあるかもしれませんが、それは「年金制度が破綻する」ということではありません。

とはいえ、もしそうなったら、受給額に大きな影響が出ることは確かです。

年金積立金の額は増減あります。少し古いですが、2019年度末の約160兆円という数字で計算してみたいと思います。以下では、わかりやすくするために毎年の年金徴収額と年金支給額について仮想の数字を用いながら、年金積立金が枯渇するサンプルと、枯渇しないサンプルを例示します。

年金積立金が枯渇するサンプル――年金は3分の1に!?

(1)年金徴収額――年金として徴収する金額が最初は年間で20兆円あるとして、これが40年後までに年間で10兆円まで均等に減っていき、毎年の年金徴収額が底打ちして、そのまま毎年10兆円が60年続くとします。年金徴収額の減額を前提とするのは、日本では生産年齢人口が減っていくからです。

(2)年金支給額――年金として支給する金額が最初は年間で20兆円で、これが20年後までに年間で40兆円まで均等に増えていくとします。年金を支給する額の増額を前提とするのは、日本では高齢者人口が増えていくからです。

(3)年金積立金の期待運用利回り――年金積立金の今後の運用利回りを税引き後で4%と仮定します。

以上のような前提でざっと試算してみますと、2021年の時点で160兆円ほどある年金積立金は、20年後の2041年に21・8兆円となり、翌2042年末には積立金が枯渇します。そして、その翌年の2043年には年金積立金はゼロなので、その年の年金徴収予定額の14・5兆円しか支給できなくなります。

つまり、この数値例では当初の21年間は現状のままで推移しますが、年金積立金は22年目に枯渇し、前年の3分の1あまりの金額しか支給できなくなります。そして、その翌年からは従来と比べて3分の1かそれ以下の額、すなわち、毎年の年金徴収額(毎年14・5兆円から10兆円に減っていく)しか支給できなくなるということです。

このように年金積立金が枯渇するサンプルでも、その後も毎年の年金徴収額(14・5兆円→10兆円)分は支給できるということです。年金積立金は枯渇しますが、その後も年金徴収額と同額の支給はできるので、年金制度そのものは破綻しないのです。

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