はじめに
「金利上昇に備えた繰り上げ返済準備」の勘違い
念願のマイホームを手に入れた松本さんご夫婦。真面目な性格で、住宅ローンの勉強に余念がありません。38歳で35年ローンを組んだのですから、完済は73歳です。自分が年を取るころには、65歳まで働くのが当たり前になるだろうと見込んでいますが、さすがに73歳までは働いていないと思うので、繰り上げ返済をしながら、早めの完済を目指したいそうです。
気になるのが今後の金利上昇です。なにしろ、5,000万円もの大金をすべて変動金利で借りていますから、「いよいよ金利上昇か!?」といった動画サイトをしょっちゅう見てしまいます。思い切って買ったマイホームですが、金利上昇で返済ができなくなるなんて事態はなんとか避けたい、とご相談にいらっしゃいました。
さっそく家計収支を拝見すると、新生活で家計が膨らみがちなところもぎゅっと引き締め、毎月5万円ずつ積み立て預金をされています。住宅ローンの支払の傍らの貯蓄はなかなか立派です。
これだけの金額を家計から捻出できるのであれば、もう少し住宅ローンの支払い額を増やし、完済年齢を引き上げることもできそうですが、手元資金に余裕がないこともあり、主に繰り上げ返済をする目的の貯蓄としているそうです。
住宅ローンの返済額の内訳は、最初の内は利息分が多くなかなか元本が減っていかないものなので、全額を元本の支払に充てる繰り上げ返済は、なるべく早い時期に実行した方がメリットがあります。ライフプランを立てた上で、具体的な繰り上げの計画を立てることが賢明です。
さて、筆者は松本さんがせっせと積み立て預金をしていることが気になりました。銀行預金なので、金利はほぼつかないのに、「将来の金利上昇に備えて」積み立てているのは、矛盾しています。ここはやはり、預金ではなくNISAでしょう。
住宅ローンは安い変動金利で借りているとはいえ、預金金利で得られる利息より、支払う金利の方が高い状態です。これでは、預金しているだけでお金の価値がめべりしますから、むしろローンの支払に充てた方がお金の使い道としては合理的です。
とはいえ、まだ手元においておきたいというのであれば、住宅ローン金利を上回る運用益が狙えるNISAでつみたてた方がよいでしょう。今までのつみたてNISAは年間40万円までしかできませんが、2024年になれば積み立て可能な枠が年間360万円へと拡大する予定です。世界の株式市場へ投資する投資信託などを利用し、しっかり運用を行っていきたいところです。