はじめに

3つの成功戦略

3つの戦略のお話をします。インカムゲインを安定させるためのプロダクト戦略、マーケティング戦略、売却益を確実なものにするためのアービトラージ戦略です。

その1:プロダクト戦略

まずインカムゲイン、家賃収入をどう安定的に享受するかという話です。インカムゲインを阻害する要因は家賃の下落です。不動産は「もの」ですから、築10年より築20年のほうが、築20年より築30年のほうが家賃は低くなります。東京23区だと、瞬間風速で1.44%年間で家賃が下がります。

もう1つのインカムゲインを阻害するファクターは空室です。空室になったら、そもそも家賃が入ってこないのです。東京23区の空室率がどれくらいかというと、11.89%です。10人に1人の大家さんが入居者を見つけることができていません。大問題です。これを解決しないと、安定的なインカムゲインを確保することができないのです。

住生活総合調査という、国交省が定期的にやっているアンケートから抜粋してきたグラフです。住まいに対する満足度を聞いています。持ち家のほうが借家よりも満足度が高いということです。持ち家のほうが満足度が高いに決まっているじゃないかと思っていると思いますが、これを論理的に考えると、こうなってはいけないのです。

なぜかというと、皆さんが問題だと思っているのは空室問題ですよね。日本の不動産総数は6,060万戸です。一方で、総世帯数は5,200万戸です。つまり、今の日本の不動産は、800万戸余っている状態ということです。余っているから、空室がリスクなのです。

「もの」のほうが多いわけだから、使う側の立場が強いマーケットなのです。借りるにしろ、買うにしろ、使う側のほうが立場が強いのです。だから、交渉回数を多くして安くしたほうが満足度は高まります。立場が強いわけだから。交渉回数を多くしやすいのはどちらでしょうか。持ち家か借家か。明らかに、引っ越しがしやすい借家なのです。「もの」が余って使う側の立場が強いマーケットならば、交渉回数を大きくしやすい借家のほうが、本来満足度は高くなるのはしかるべきです。でも、現実は逆転しているのです。これ、何かおかしいと思いませんか。

週末になると、新聞にマンションデベロッパーのチラシが入っていませんか。大体が同じような間取りです。突き当たりがリビングになっていて、水回りが固まっていて、洋室がある。これは「田の字モデル」といって1960年代に考えられた間取り設計です。そこから何も変わっていないのです。

内装を見たらもっと顕著です。結局、金太郎飴のように、同じような物件ばかりしか世の中に存在していないから、交渉回数、つまり引っ越ししようが何しようが、満足度が高まる要素がないのです。これが今の日本の不動産業界の現状です。だから、価格で選ぶことになって、一番安い部屋に決めるという結論になるのです。これは大家さんからしたら、たまったものじゃないですよね。これは、インカムゲインの安定性と全く逆の状況なのです。

じゃあ、どうすればいいのか。世の中のほとんどの物件がこういう物件ばかりなのだから、こういう物件にない差別化のポイントを何か作ればいいという結論になるのです。

これまで不動産投資の差別化ポイントは、立地でした。「渋谷だから大丈夫」「場所がいいから絶対に賃貸つきますよ」。これが不動産投資営業マンの営業トークでした。でも、渋谷や青山は空室物件ゼロなのかというと、そんなことはありません。渋谷だろうが、青山だろうが空室は10%超えています。10人に1人の大家さんは入居者を見つけることができていないのです。もう場所だけでは駄目な時代になったのです。なぜかというと「もの」のほうが多い時代になったからです。

何をすればいいのか。「もの」としての魅力そのものを高めればいいのです。ほとんどの物件が同じような物件ばかりだからです。結局、インカムゲインを安定させるためには、入居者に選んでもらわなければ話になりません。選んでもらえる材料をどれだけ多く提供できるかということが、インカムゲインを安定させるための武器なのです。

一番手っ取り早いのは、物件を選んでもらいやすくするために、これから企画をして、プランニングをして、設計をすることです。でも、今は土地代も人件費も建材費も高いというトリプル苦になっていますので、まともに新築物件は難しいです。

そうだとすれば発想を変えて、いい場所にある中古物件を買ってきて選ばれるように中を変えてあげればいいという発想になるのです。その方法は、2つあります。リフォームとリノベーションです。この定義は全然違いますので、答えをしっかりご理解いただきたいと思います。

リフォームとは、英語に直すと分かりやすいです。「re form」ですから形が元に戻るという定義です。壁紙がはがれた、カーペットフロアが汚れた、それをきれいな元の状態に戻す、これがリフォームの定義です。そうだとすると、リフォームでは差別化が図れないというのは一目瞭然です。差別化を図っていなかった状態にきれいに戻したという定義になるからです。

リノベーションとは何か。相場より高い家賃が取れるということです。

リフォームとリノベーションの違いはただ1点だけです。相場より高い家賃が取れるか取れないか、それだけです。どんなにきれいな内装デザインであっても、相場より高い家賃が取れていなかったらイノベーションは起きていないので、それはただのデザインリフォームなのです。

では、相場より高い評価ができるデザインをどう実現したらいいのか。デザインの方向性から整理をしてみます。

デザインの方向性は、大きく4つに分けることができます。アーバンラグジュアリー、ナチュラルカントリーか、クラシカル、デコデコのポストモダン。この4つのジャンルです。どこで勝負をしていけば、一番差別化が図れるでしょうか。これは戦略的に考える必要があります。明らかに、ここで勝負してはいけないというジャンルが1つだけあります。

それはアーバンです。なぜかというと、これは新築物件のカテゴリだからです。毎年毎年大量に供給される新築物件のコンセプトは、必ずアーバンラグジュアリーです。設備さえ新しかったらアーバンラグジュアリーと言えますから。でも、世の中に大量に供給される物件が全部これだとしたら、これでは差別化は図れません。

やりたいのは何ですか。きれいな物件に投資することですか。違いますよね。選ばれる物件に投資することですよね。世の中に数多く供給されている、こういうアーバンラグジュアリーが絶対に実現できないコンセプトは何でしょうか。古さの魅力です。アーバンラグジュアリーは古くないのだから。

なので、我々はクラシカルを共通のコンセプトとして「REISM」というリノベーションブランドを展開させていただいております。

ただし、クラシカルをやっていくために、1つだけこだわらなければいけないポイントがあります。それはテクスチャー、手触り感です。質のいい素材を使うということです。安っぽい素材を使って古さの魅力を伝えたところで、住まわれる方も「こんなのただの古ぼけた物件じゃん」となるだけです。だから、いい素材を使わないといけないのです。

我々は桁違いのものを使っています。大体のワンルームマンションは25平米そこそこなので、かけても100万、120万ぐらいです。配管を換える、給湯器を換える、お風呂を換えるというように全部フル取り換えしても120万ぐらいです。でも我々は、400万ぐらいかけています。もう桁違いにかけています。たかだかワンルームマンションごときに、400万もかけてリノベーションする物好きな業者というのはいないので、我々の物件には待ち行列ができています。今、6,300人が入居待ちなのです。一番人気の物件だと、50人以上が入居待ちです。入居待ちが50人以上もある物件を聞いたことありますか。空室になるのが問題ならば、待ち行列ができるのならば空室にはなりませんよね。問題は解決したということです。

もう1つ。家賃は下げなくてもいいのです。今の状態で待っているのだから、4年後の入れ替えのときでもその状況で借りてくれるのです。家賃が下がるのが問題なんですよね。空室になるのが問題なんですよね。でも、待ち行列があれば、空室にならないし、家賃も同じ家賃が取れるのです。だから、問題は解決したということになります。

これまではインカムゲインを安定させるプロダクト戦略のお話でした。ただ、インカムゲインを安定させるためには、プロダクト戦略だけでは足りません。マーケティング戦略が必要です。

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