はじめに

その2:マーケティング戦略

私どもは、いつもお客さまから非常にありがたいお言葉をいただいております。「空間そのものがクリエイティブで刺激がもらえます」「やっと求めていた部屋に出逢えました」とか。元々こういう入居者を探しているのではありません。こういう入居者になるように、お客さまを育てている会社なのです。それが圧倒的に他の会社と考え方が違うポイントです。

我々はマーケティングをやっている会社ですが、ほとんどの会社がやっているのはマーケティングではありません。「セリング(Selling)」です。マーケティングとセリングでは全然違います。マーケティングは顧客創造です。セリングは販売活動です。マーケティングというのは、種まきなのです。種をまくから収穫ができるのです。種まきをしないで集客をするから、値引競争になるのです。

一般的な不動産会社が何をやっているか。ターゲットの母集団がいます。ワンルームマンションに住む可能性のある人の全体は東京23区に240万人ぐらいいます。その中で数カ月以内に引っ越しをしなければいけない人たちがいます。更新の時期が近い、進学しなければいけない、だから今物件を探しているという人たちです。その人たちに対して、不動産会社の人たちは「この物件どうですか」とやっているのです。

「こういう物件はないですか」「こういう物件がありますよ」というのは、御用聞き以外何者でもないのです。マーケティングが顧客創造、お客さまをつくり出すことだとしたら、まずは、お客さんになっていない、ここをどうやってお客さんにするかということを考えるのが、本来のマーケティングなのです。

マーケティングの種まきというのは何か。ニーズをウォンツに変えてあげることです。ニーズというのは、モヤモヤと不満な状態です。ウォンツというのは、具体的にこれが欲しいという状態です。これがマーケティングの種まきです。このマーケティングの種まきをすることによって入居者を囲い込む、これが戦略なのです。

ターゲットの母集団がいます。その中には「別に普通のワンルームでいい」と言っている人たちがいます。夜は寝に帰るだけだから家賃は安いほうがハッピーな人たちがいます。ほとんどの人たちはここターゲットにして営業をかけてしまうのです。だから家賃が落ちるのです。でも、普通のマンションじゃ嫌だという人もいます。その中でも、新築物件が好きな人たちは、アーバンラグジュアリーが好きな人たちです。でもこの人たちというのは、ピカピカが好きなので、ピカピカじゃなくなった瞬間にピカピカの物件に引っ越してしまう人たちなのです。だから、囲い込みができないのです。

一方、普通の物件は嫌だけど、ピカピカではなく伝統とか趣とかの味わいがホッとするという、ちょっとロハス的な人たちもいます。じゃあ、そこを囲い込めればいいという話になるのです。そのために、我々がやっているのがシリーズ化です。なぜシリーズをイメージ展開をしているかというと、人間は見たことがないものを、欲求できない生き物だからです。見せてあげないと「これが欲しい」とならないのです。それほど強いニーズがないのです。まず、入居者さまのニーズを顕在化させるのです。

その後、何をしなければいけないか。マーケティングの教科書に「マーケティングは種まき」「セリングは収穫」と書いてあります。でも、種をまいただけで収穫できるのであれば農家さんというのは楽な仕事ですよね。種をまいたら育てるのです。それがブランディングです。

我々がやっていることを説明します。まず、種まきをします。うちの物件が好きそうな人たちが読みそうな雑誌に掲載してもらって、まず認知してもらいます。

そうしてその人たちを囲い込んで、6,000人ぐらいのREISM会員という会員組織をつくっています。そこに仕掛けをしていきます。定期的にその方々を集めて懇親会を開催しています。うちのリノベーション物件に実際にお住まいになっている入居者に来ていただき、お部屋の自慢をしてくださいとお願いするのです。

そうすると何が起きるか。もともとそういう暮らしに憧れている集団の中にいる人が、そういう暮らしを実現している人たちの自慢を聞くとうらやましくなるのです。「私もその家具が欲しい」「私もその雑貨が欲しい」もっと言えば「私もそんなお部屋に住んでみたい」と。その結果、欲求が顕在化して「私も引っ越したい」という結果になるのです。

我々はそういった「いつ引っ越すか分からないけれども、もし引っ越すならば、REISMさんの物件に引っ越したい」というところを囲い込んでいるのです。ほとんどの不動産会社は、目の前で仲介手数料を落としてくれるようなお客さんしか相手にしていません。

なぜ、我々は「いつ引っ越すか分からない」というところでやっているか。これはブランディングのアカデミックな定義なのですが、ブランディングというのは180日以上かけないと蓄積できないからです。

賃貸で引っ越す人たちがどのぐらいの期間で引っ越すかというと、せいぜい2~3カ月です。たかだか60日や90日で、そもそもブランディングはできないのです。だから我々はその前から囲い込んでいるのです。

その方々に対して、いろんな情報発信をすることによって「どうしてもリノベーションに物件に住みたい」というマインドを高めて、その方に対して物件を提供する。そうすると「iCafeだったら、絶対住みたい」「Domaだったら、引っ越す予定はなかったけれど引っ越します」みたいなことが実現できるのです。

その結果、我々が達成できていることが2つあります。我々の入居者さまは、前の入居者さまがいる状態でお申し込みいただくのが約4割です。普通、こんなことはないです。普通、賃貸物件というのは、前の入居者が出て、内装クリーニングをして、それから内装チェックをして、契約をして、引っ越し日を決めて。だから、数カ月は空くのです。

我々の入居者は何が違うかというと、シリーズ化をしているので、中のイメージが分かっているのです。そして、古くなっても悪くならないことも分かっているのです。人気物件だから他の人たちに取られるかもしれないということも分かっています。だから、先に申し込むということが実現できているのです。

結果、4年間の平均的な空室期間というのは、1カ月を切っています。家賃も発生しています。これがインカムゲインの安定性そのものなのです。

もう1つ、我々が達成している革命的なことがあります。それは何かというと、我々の入居者さまは場所を選びません。普通、賃貸というは沿線の駅で選びますよね。場所がいいに超したことはありません。ところが、我々の入居者さまはお部屋のファンなので、一番始めに探していたところとは全然違うところで借りているのです。「もう、iCafeだったらどこでもいいです」という選び方をしているのです。これがブランディングです。

不動産業界というのは、物件を作ってからお客さんを探す業界です。でもこれは、もう時代遅れです。お客さんをつくってから物件をつくればいいのです。他の業界では、みんなやっていることです。先にファンをつくっておけばいいのです。それがマーケティング戦略です。

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